2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Practice in the Components Possession Area of "Hidden Christian Heritage Sites"
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21K01083
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
才津 祐美子 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40412613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 潜伏キリシタン関連遺産 / 文化遺産 / 世界遺産 / 構成資産 / 生きている遺産(リビングヘリテージ) / 文化資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、①各構成資産保有地域(長崎市外海地区、五島市奈留島および久賀島)における聞き取り調査、②長崎市および五島市の行政機関における聞き取り調査、③先行研究に関する文献資料調査を行うとともに、④研究成果の公表にも取り組んだ。 まず①②について報告したい。2023年度は世界遺産登録5周年にあたり、各地で記念事業が展開された。地方公共団体主催のスタンプラリーやシンポジウムといった催しから、民間主催の講演会や祭りまで、内容は多岐にわたっていた。ただし、大枠としては当該文化遺産の歴史的価値の再確認・情報発信に関するものが大半で、昨年度の報告書で指摘したような、現在各構成資産保有地域が直面している地域自体の再編とそれによる地域づくりという課題について深く切り込むようなものはほとんど見受けられなかった。 一方で、長崎市外海地区では、地域づくりに関連する新たな動きが見られた。宗教法人お告げのマリア修道会が主体となって、出津集落の広範囲に及ぶフィールドミュージアム「ド・ロさまと歩くミュージアム」が作られることになり、2023年10月にその一部がオープンしたのである。本ミュージアムには世界遺産の構成資産になっていないものも多分に含まれているが、歴史的に構成資産の延長線上にあるものであり、構成資産の新たな活用にもつながっている。また、これは着地型観光への転換とも考えられ、地域の活性化につながることが期待できる。2024年度も新たな施設が完成する予定なので、引き続き調査を行っていきたい。 ③に関しては、今年度は書籍を中心に調査・収集を行った。④の研究成果の公開については、関連学会での発表に加えて、長崎市外海地区の出津地区ふれあいセンターが主催した講座において3回に渡って講師を務め、構成資産保有地域の現状と課題についてこれまでの調査結果を報告するとともに、住民と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも述べた通り、2023年度は、①各構成資産保有地域(長崎市外海地区、五島市奈留島および久賀島)における聞き取り調査、②長崎市および五島市の行政機関における聞き取り調査、③先行研究に関する文献資料調査を行うとともに、④研究成果の公表にも取り組んだ。したがって、2023年度に関しては、ほぼ予定通り研究を遂行できたといえる。 しかし、2021年度から2022年度にかけて、COVID-19感染拡大の影響で現地調査ができず、計画通り進まなかった分を取り戻すには至らなかった。したがって、本研究全体の進捗状況としてはやや遅れているといえる。このため、研究期間を延長し、次年度も研究を継続することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、①各構成資産保有地域(長崎市外海地区、五島市奈留島および久賀島)における聞き取り調査、②地方公共団体(長崎県、長崎市、五島市)における聞き取り調査、③先行研究に関する文献資料調査を中心に研究を遂行する。 とりわけCOVID-19感染拡大の影響でやや遅れている①の聞き取り調査については、次年度はさらに積極的に実施したいと考えている。また、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」には他に9つの構成資産があるので、それらのうちのいくつかで現地調査を行うことも視野に入れている。そうすることで、本遺産全体の現状を把握することができ、さらにそれが研究対象地域のより深い考察につながることが期待できるからである。 研究成果の発表については、これまでの調査で得られた調査データおよび知見をもとに、関連学会で発表するほか、報告書や論文等を執筆する。
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Causes of Carryover |
2023年度に関しては、ほぼ予定通り研究を遂行できたが、現地調査時の移動距離が短く、宿泊が伴わない調査が多かったため、予定よりも旅費の支出が少額となった。また、過年度にCOVID-19感染拡大の影響でできなかった現地調査についても2023年度中に行う予定だったが、当初計画していた調査に上乗せして遂行することは難しかった。したがって、研究期間を延長し、次年度も研究を継続することにした。 2024年度は、過年度に実施できなかった現地調査を中心に研究を行う。助成金は旅費や現地における資料の購入および複写、聞き取り調査で得た資料の文字起こし等の費用として使用する予定である。また、この他、研究関連書籍・資料の購入や複写、資料整理に必要な物品の購入にも使用する。さらに、研究成果を関連学会で発表する予定なので、その旅費も支出する。
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