2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Cultural Landscape and 'Shugendo' as a Mountain religion
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21K01090
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田中 滋 龍谷大学, 公私立大学の部局等, フェロー (60155132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 竜司 龍谷大学, 社会学部, 教授 (10291361)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 修験道 / 観光化 / 文化的景観 / オーソプラクシー / 大峰 / オーセンティシティ / ジェントリフィケーション / 世界遺産 |
Outline of Annual Research Achievements |
宗教の社会的役割は、歴史を遡れば明らかなように多様・多彩である。修験道は、その出自が多様な宗教(神道、仏教、道教など)の混交にあることにひとつの原因があるのであろうが、他の宗教と比べて社会に対してまさに多様・多彩な役割を担ってきた。しかし、その役割の多様性は明治以降著しく減退した。これを裏返してみるならば、修験道がその多様な役割を明治以降失っていく歴史を調べることによって、宗教一般に対して近代化がいかなる変化をもたらしたのかを明らかにする手掛りが得られることになる。 修験道が担ってきた役割の多様性の減退は、神仏分離令(排仏毀釈)や修験道禁止令などの明治政府の政策によるところが大きいが、それがどのような形で現れたのかは全国に多数あった修験の霊山によって大きく異なっている。 本研究では、大峰山、英彦山、出羽三山という三大霊山とそれ以外のいくつかの霊山を対象として調査を進めることにしている。大峰山では修験道が神仏分離や修験道廃止の難局を乗り越え、修験の霊山として残ったが、令和5年春に調査を行なった英彦山では、神道、仏教、修験の三者の複雑な関係の中から神道化の徹底と修験道の根絶という結果が生み出された。 こうした差異を生み出したさまざまな要因を明らかにすることが当面の課題となるが、そのひとつの要因として考えられるのが、霊山に参拝する信者(行者・檀家など)と霊山の聖職者(神道・仏教・修験)との関係である。この関係は、参拝の形態をも左右し、それが神仏分離や修験道禁止の難局を乗り越えることを可能にし、また不可能にしたという見通しである。また、こうした信者-聖職者の関係は、参拝者の霊山での宿泊形態とも絡み合いながら、明治以降の霊山のあり方を規定し、さらには、修験道ブームとさえ言われる現在の状況下での霊山の観光化にも影響を及ぼしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和4年度は、研究協力者などと実施を予定していたフィールド調査を、コロナ下の影響で十分に行なうことができなかった。そのため、かなり部分の予算執行を令和5年度に回さざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、コロナ禍の状況を見てのことではあるが、夏と春にフィールド調査を計画している。調査地としては、大峰山との比較の観点から、三大霊山のひとつである出羽三山(山形県)などを予定している。また、そうした比較を元に、主要な調査地である大峰山の調査も実施できたらと考えている。 文献研究としては、各地の修験関係の史資料を収集すると同時に、その分析を進め、各地の霊山における信者と信者との関係を明らかにすると同時に、宗教一般におけるオーソプラクシーとオーソドキシーの関係についての理論研究を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していた主要な調査かできなかったことが大きな要因である。
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