2021 Fiscal Year Research-status Report
Religious Practices of Holy Objects and their Ongoing Unfoldment: Focusing on Changes in Processing Technology and Disposing Ways
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21K01091
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
藤原 久仁子 (森田久仁子) 甲子園大学, 栄養学部, 准教授 (00464199)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 聖人崇敬 / 聖なるモノ / マテリアリティ / 民衆カトリシズム / 加工 / 廃棄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プラスチックやLEDランプを用いた聖なるモノが大量に流通するカトリック社会を対象に、モノに対する日常レベルでの信仰形態や廃棄の仕方を調査し、①民衆カトリシズムの現代的特徴、②「環境への罪」を犯さないための創意工夫と聖なるモノを破壊する行為の間のバランスと葛藤、③教会と信徒の間に介在する業者(特に聖像の制作・修理・加工を行う業者と廃棄請負業者)の活動を明らかにすることにある。また、これらにより、喜捨、譲渡、寄付、廃棄等、所有権の移動や消滅を扱う「処分の人類学」という新たな領域の開拓を試みることにある。 このため、初年度はマテリアリティや聖人・聖遺物崇敬に関する文献研究を行うとともに、マルタのフグーラ市にあるアート工房で聖像の制作と修理を行う職人と顧客(信徒)を対象に調査を行う予定であったが、新型コロナの感染状況を鑑み、現地調査は延期せざるを得なかった。本年度は、文献のほかオンライン上で読むことのできるマルタの新聞記事をもとに、幅広く現地情報を収集することにし、聖なるモノと単なるモノ、オリジナルとレプリカ、唯一性と増殖可能性等を分かつ論理について考察を行った。また、中世以降の聖人・聖遺物崇敬の歴史に関する知識の強化に努めた。特に、Ta'Giezuをめぐる信仰の歴史とモノの制作について、アケイロポイエトス像の生産と消費の観点から把握するよう努めた。これらの研究の一部は、甲子園大学の一般向け公開講座における口頭発表、及び雑誌論文において公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従前からある聖像やそのレプリカ像、ロザリオ、スカプラリオ、御絵等の信心用具に関しては、これまでの調査でデータを収集済みであるが、新素材のモノや、メダイと御絵等複数のモノをひとつのアイテムにまとめる加工技術、その結果生じる新たな信仰と奇蹟譚の収集という、本研究に欠かせない主要な調査データについて、新型コロナ感染拡大の影響から調査を断念したことにより、収集することが出来なかった。 一方、聖人崇敬やマテリアリティに関する先行研究の整理に多くの時間を割くことができ、「聖なるモノ」の取り扱いをめぐる論理という視点に加えて、もう一つ、今後重要となりそうな切り口を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナに加えてサル痘や小児急性肝炎の症例が報告されており、今年度マルタで調査が可能なのかどうか、現時点では見通しが立たない。また、たとえできることになったとして、ソーシャルディスタンスを保った調査が、これまでの、信頼関係に基づくデータと同じ厚みや濃さを持つものとなるのか、インフォーマルなインタビューに応じてくれる人はどれくらいいるのか、計画通り調査を進めることができるのか厳しい問題に直面している。 夏まで状況を見極める一方で、国内カトリック教徒の調査を開始し、次年度のマルタ現地調査で得られるであろうデータとの比較検討のためのデータ収集を行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、マルタにおいて現地調査を行うことができなかった。2022年度の状況を見極めた上で、可能であればマルタにおいて調査を行い、状況的に許さないようであれば、比較のためのデータ収集として、国内カトリック教徒を対象に聖なるモノをめぐる信仰実践に関する調査を行う予定である。
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