2021 Fiscal Year Research-status Report
日中韓の民俗学の知的布置に関する基礎的研究―民俗学教育における教科書分析を中心に
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21K01092
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田村 和彦 福岡大学, 人文学部, 教授 (60412566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 星 神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (00329591)
金 広植 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (20768080)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民俗学 / 東アジア / 教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本・中国・韓国の研究機関における民俗学の教科書を収集、検討することで東アジアにおける民俗学的関心の共有性と差異を明らかにし、同時に、各国の隣接諸科学との関連性を考察することで、今後の学術交流の新機軸を形成するものである。 日中韓の民俗学においては、近年とくに活発な学術交流がみられるが、民俗学のもつ顕著な特徴の一つは、それぞれの国情に影響を受けつつ展開する普遍主義への対応という側面がある。その意味で、民俗学は文脈依存性が高い特徴を持っており、広く知られる概念を介して交流可能な状況が存在する一方で、その理解のありかたには大きな差異が存在する。 本研究は東アジア(日本・中国・韓国)における民俗学教育に用いられるテキストを検討することで、各国における民俗学教育の側面を検討し、今後の研究交流のプラットフォーム形成を目指すものである。 初年度である本年は、主に各国の主要なテキストと、基本的な文献の収集とをおこなった。具体的には、日本においては公開されている大学シラバスから、民俗学のテキストを抽出し、大まかな傾向を把握した。ただし、この手法にはいくつかの限界(各大学のシラバス公開状況の差異、「民俗」語彙による抽出と、授業内容の概述からみる「民俗学」の授業との差異など)が見られることから、次年度以降、ここで得られた分析を踏まえつつ、補足をおこなってゆく予定である。 中国、韓国については、シラバスの公開状況など日本とは異なる条件にあることから、主要なテキストの収集と、今後の調査の準備をおこなうことで次年度の研究に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に開始した教科書に類するテキストの収集については、順調に進んでいる。中国に関しては当初の計画以上の進展があった。一方で、日本の民俗学テキストと大学に開講されている授業の関係の調査については当初の計画よりも多少の遅れが出ている。総合的に見て、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年の前半期に、現在の日本における民俗学の開講授業とテキストに関するある程度の関係性を分析し、これをもとに中国、韓国における教育状況の調査のためのたたき台を再調整する。本年度後期には中国、韓国における調査を実施する。これと並行して、現在の計画をよりオープンな形で問い、より広い視点からの議論に耐えうるものとするために、学会あるいはシンポジウム、研究会の場で部分的な発表をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、当初予定していた中国、韓国における現地調査が実施できなかった分について次年度に繰り越した。また、中国の教科書の入手については中国論文データベースなどを利用することにより、計画当初から一部入手・購入方法に変更が生じた。 このため、渡航調査計画分と、中国に関するテキスト購入用の費用を中心に現実に即した形での再配置をおこなった。該当部分の具体的な使用計画としては、取材対象大学を再度リストアップして遠隔方式でのインタビューを可能にすること、中国語のテキストに関しては一部をデータベース経由での入手(有料)割合を増加することの2点となる。
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