2021 Fiscal Year Research-status Report
明治時代以降の国内各地の島々における移住者の社会の形成と祭や芸能の伝承の研究
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21K01094
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 教授 (90290923)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 島 / 移住 / 民俗芸能 / 祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症が収束しなかったため、本研究が主たる対象とする北海道周辺の島々・小笠原諸島・種子島・大東諸島について、予定していた各々の地域が属する都道県立の図書館・資料館等での資料調査や予備的な現地調査を行うことができなかった。そこで、これまで行った全国各地の島々に関する調査で収集した、本調査に関連する先行研究等の文献資料や、所属する国立民族学博物館所蔵の図書等をもとに、それぞれの地域における明治以降の人々の移住と地域社会の形成、祭と芸能の創始・伝承の様相の概括的な把握を試みた。その結果、何れの地域においても、明治の早い時期から出稼ぎ等の移住が始まり、明治後期から大正にかけて移住者の定住が進んで地域社会が形成されたこと、移住先での生活の困難の克服のための精神的支柱として、移住後早い時期に社寺等の宗教施設が建立されたこと、それらの宗教施設を中心に、祭やそれに伴う芸能や余興が催され、人々が日々の生活を営むための活力や地域社会としての一体感の醸成が図られたこと、祭や芸能や余興としては、神輿の渡御・歌舞伎芝居・相撲がよくみられたこと等の特徴が共通して認められることが判明した。その一方で、それぞれの出身地の生活文化を身に付けた移住者が移住先で生活を始めた結果、祭や芸能の内容には、そうした共通性の一方で、北海道における北陸由来の獅子舞や東北由来の漁撈の労働歌、小笠原諸島におけるサイパン等の太平洋地域由来の南洋踊、種子島における甑島由来のトシイドンや沖縄・奄美群島由来の歌や踊、大東諸島における八丈島由来の八丈太鼓やショメ節等、地域独自のものもみられた。また、こうした祭や芸能も、出身地が異なる移住者が世代を経て地域社会の成員としての一体化が進むに連れて、出身地を問わず地域社会の人々が等しく共有する文化として認識され、実践されるようになる傾向が何れの地域でも見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の流行が収束しなかったため、本研究が主たる対象とする北海道周辺の島々・東京都小笠原諸島・鹿児島県種子島・沖縄県大東諸島等について、本年度予定していた、各々の地域が所在する都道県立の図書館・資料館等における文献や映像等の資料調査、予備的な現地調査、各々の地域に関する研究実績を有する研究者等からの情報収集を行うことができなかった。そこで、これまで行った全国各地の島々に関する調査で収集した、本調査に関連する先行研究や調査報告等の文献資料や、研究代表者が所属する国立民族学博物館所蔵の図書等をもとに、それぞれの地域における明治以降の人々の移住と地域社会の形成や、祭と芸能の創始や伝承の様相の概括的な把握を試みた。しかし、既収集の文献資料にも国立民族学博物館所蔵の図書にも、それぞれの地域に関する地方史(誌)類や民俗誌等の基本図書、地域の民俗学や歴史学の研究団体の機関誌、地域の博物館や資料館等の研究機関の研究誌といった資料の所在は十分ではなく、それぞれの地域の様相に関する理解や把握は、ごく概括的な内容に止まらざるを得なかった。その結果、今後、令和3同年度に果たせなかった、各々の地域が所在する道県立図書館・資料館等における文献等の資料調査や情報収集によって、各々の地域の様相の理解や把握を深化・充実させるという課題が残された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が主たる対象とする北海道周辺の島々・東京都小笠原諸島・鹿児島県種子島・沖縄県大東諸島等における明治以降の人々の移住と地域社会の形成や、祭と芸能の創始や伝承について、関連する各種資料を所蔵する北海道・東京・沖縄・鹿児島等の図書館や資料館等における文献・映像等の資料調査や、それぞれの地域に関する研究実績を有する研究者等からの情報収集を行い、令和3年度の研究の遅れを取り戻すとともに、それぞれの地域の全体的な様相の理解や把握の更なる深化・充実を図る。また、それらの資料調査や情報収集の成果を踏まえて、本研究が対象とするそれぞれの地域において、島内での移住者による地域社会の形成や、祭と芸能の創始や伝承等に関する現地調査を行う。 但し、こうした調査や情報収集は、各地の博物館や図書館や島々等に実際に足を運ぶ必要があるが、今後の新型コロナウイルス感染症の収束状況によっては、それらの場所に実際に赴くことを断念せざるを得ない。特に、規模の小さな島々に関しては、医療資源が脆弱で、同感染症の予防や発症に対処する能力が、本州等に比べて十分とはいえないこと等を考慮すると、現地調査の実施の可否の判断については一層慎重に行う必要がある。今後の研究の遂行にあたっては、こうした事情を十分踏まえた上で進めることとする。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の流行が収束しなかったため、当初予定していた、本研究の主たる対象となる北海道周辺の島々・東京都小笠原諸島・鹿児島県種子島・沖縄県大東諸島等が所在する都道県立の図書館・資料館等における文献や映像等の資料調査、各地の島々における予備的な現地調査、各々の地域に関する研究実績を有する研究者等からの情報収集を行うことができなかった。従って、これらの資料調査・情報収集・予備的な現地調査にかかる旅費・資料のコピー代・資料整理のための人件費等の経費を使用することがなかったために、次年度使用額が生じた。令和4年度は、当初の研究計画でこの年度に実施を予定していた北海道の島々や種子島等の現地調査と併せて、令和3年度に予定しつつも実施できなかった各地の図書館・資料館等での資料調査・情報収集・予備的な現地調査を次年度使用額を用いて実施し、本調査のより効率的な遂行と内容の一層の充実を図りたい。
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