2023 Fiscal Year Research-status Report
ロシア統治下サマルカンドにおけるイスラーム法廷とロシア法廷
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21K01100
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
矢島 洋一 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60410990)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中央アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、帝政ロシア統治期の中央アジアにおけるイスラーム法廷とロシア法廷との関係を、当時の裁判記録から解明することを目的とする。当該時期の中央アジアでは、伝統的なイスラーム法を運用する法廷とロシア法を運用する法廷が並立しており、ロシア当局が両者の管轄領域を定めていた。しかし、実際にはムスリムを当事者とするイスラーム法裁判の判決がロシア法廷によって破棄されるなど、両者は複雑な関係にあった。本研究は、ウズベキスタン共和国に所蔵される、当時作成されたイスラーム法廷とロシア法廷の裁判記録を同時に検討することを通じて、両法廷の関係を明らかにすることを目指している。本年度は予定していたウズベキスタン共和国における裁判記録の調査を行うことができなかったため、既に取得済みの資料の整理と分析を中心に主に行った。特に、トルキスタン地方統治規程によってロシア法廷の管轄とされているいくつかの種別の案件について、サマルカンド州のロシア法廷のテュルク語・ロシア語の法廷記録の分析を重点的に行うとともに、それらとイスラーム法・ロシア法との関係について検討した。現状ではそれらの案件や判決の全体的な傾向を明らかにするには事例が不足しているものの、今後の研究の方向に見通しを付けた。また、近代中央アジアのイスラーム法廷における奴隷解放の事例について検討し、当時作成された法廷文書に基づき中央アジア古文書研究セミナーにて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた海外調査は行うことができなかったものの、既に入手済の資料の整理・分析等により研究に十分な進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は取得済資料の分析作業を中心に行う予定である。
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Causes of Carryover |
当年度の未使用分は旅費・物品費として使用する予定だったが、急ぎの必要がなかったため、次年度に繰り越した方がより有効に使用できると判断した。繰り越し分は、次年度の旅費・物品費・バイアウト経費の一部として使用する予定である。
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