2021 Fiscal Year Research-status Report
Socio-legal Research on Disputes Caused by the Abolition of Public Facilities and the Withdrawal of Large-scale Retail Stores
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21K01102
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
阿部 昌樹 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (10244625)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 紛争 / 人口減少 / 地域社会 / 公共施設 / 大規模小売店舗 / 責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公共施設の廃止や大規模小売店舗の撤退が、当該公共施設や大規模小売店舗の周辺に居住する人々と、当該公共施設の設置者である自治体や大規模小売店舗の運営主体である企業、そしてさらには、大規模小売店舗の立地に関して規制権限を有する自治体との間に、どのような紛争をどのような頻度で引き起こし、発生した紛争はどのように終息していくのかを、法社会学の領域における紛争経験の蓄積を踏まえ、具体的事例の詳細な検討と調査票調査を通して解明しようとするものである。 今年度は、主として地方新聞のデータベースを活用して、事例研究の対象とする事例を選択するとともに、その事例に関する新聞記事を網羅的に収集し、それらを精読することにより、紛争の実態を可能な限り詳細に把握することに注力した。結果的に、比較的近年に発生した複数の興味深い紛争事例を知ることができ、また、それらの事例の関係者に聞き取り調査をする際に必ず聴取する必要がある事項のリストを作成することができた。 また、それと並行して、国内外の法社会学の領域における紛争研究の主要文献と、社会心理学の領域における責任判断に関する主要文献を読み進めた。その結果、一般の人々が日常生活のなかで様々な困難に遭遇した際に、その困難が発生した理由をどのように認識し、誰にその困難を帰責するのかについての社会心理学の研究蓄積のなかに、そこで用いられている理論や分析枠組を本研究に応用できる可能性のあるものがあることを発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本年度中に事例研究の対象とする事例を選択したうえで、選択した事例の一部について、関係者への聞き取り調査を実施することを予定していたが、コロナ禍の影響により、関係者への聞き取り調査は断念せざるを得なかった。地方新聞の記事等の文書データを活用した事例研究は、当初考えていた以上に進展し、その結果得られた知見も、当初考えていた以上に豊富なものになったが、関係者への聞き取り調査によってしか得られない知見もあるため、それがまったくできていないことは、研究の遅延と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響はまだ継続しており、紛争事例の関係者を対象とした聞き取り調査ができるかどうかは、未だ不確定である。聞き取り調査を依頼しても、断られる可能性が高いように思われる。そこで、コロナ禍の推移を見極めつつ、聞き取り調査の依頼を試みる一方で、当初は個別の紛争事例の関係者への聞き取り調査によって収集した質的データの分析をとおして進めていくことを予定していた研究の一部を、インターネットを利用した調査票調査によって収集可能な量的データの分析をとおして行っていく可能性も検討する。そのために、当初は予定していなかったことであるが、混合研究法の具体的な研究における利用の仕方について、改めて関連文献を精読することを予定している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、関係者への聞き取り調査ができなかったため、聞き取り調査に要する旅費と録音データの反訳費がまったく支出されなかったことと、2021年度中に購入を予定していた統計分析用ソフトウェアの購入を、当該ソフトウェアが2021年度中にアップデートされる予定であることを踏まえて、2022年度に延期したことが、次年度使用額が大きくなった主たる理由である。この金額については、2022年度の研究計画を部分的に変更することにより、2022年度分として請求した助成金と合わせて、2022年度中に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)