2021 Fiscal Year Research-status Report
A Construction of Normative Theory of Religious Regulations for Social Inclusions of Migrants
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21K01109
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
横濱 竜也 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90552266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 功一 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (00404947)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移民正義論 / 社会的包摂 / ネーション / 社会統合 / 公私区分 / 宗教調和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究初年度である令和3年度は、新型コロナウイルス感染症流行により、研究計画の十全な実行は困難となったが、研究代表者は、以下の2つの論文を公刊した。移民正義論と相関する遵法義務論において、書評論文を学会誌に掲載した(「麓に下りる―那須耕介『法の支配と遵法責務』」)。書評対象とした著書では、個々人により法や統治への関わり方が異なることを重視し、政治的自己統治に積極的に関与する公民を範型としない姿勢をとり、その下で遵法義務問題の問い方が見直されている。が、書評論文では、そのような姿勢が遵法義務問題への応答を無際限に拡散させることになりかねないと指摘した。 また、移民正義論の前提となる世界正義論に関わって、新型コロナウイルスワクチン配分問題を扱う論文を、学内周年記念誌に掲載した(「コロナ感染症とナショナリズム―ワクチン分配・開発における正義をめぐって」)。ワクチンを自国優先で配分しようとする動き、すなわち「ワクチン・ナショナリズム」に対して、世界大の匡正的正義・分配的正義の実現を説く「コスモポリタニズム」と、一定の自国民優先が道徳的に許容されるものとする「ナショナリズム」双方から、批判的検討を加えた。 研究分担者は、日本国内の低熟練外国人労働者の実情を描いたルポタージュへの書評を著した(「多様性」幻想を完膚なきまでに破壊する一冊―安田峰俊『「低度」外国人材』)。また、国と地方における新型コロナウイルス感染症対策の歪みとその悪影響を、とくに営業の自由をめぐる憲法学説の批判的検討をも踏まえつつ指摘する論考を公刊している(「「夜の街」の憲法論――立憲主義の防御のために」、「コロナ下の夜の街〈1〉狙われた街・すすきの」)。ここで扱われている違憲審査基準論は、信教の自由を含む憲法上の人権の優先性をめぐる諸議論とも関係しており、本研究における宗教制度比較・規範的評価の一環をなすものでもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症流行とその下での移動制限等により、当初予定していた専門家を招いての研究会開催、また国内およびシンガポール・インドネシアにおける宗教政策の実地調査は見送らざるをえなかった。 他方、新型コロナウイルス感染症とその対策は、各国の移民受け入れ・受入国での移民の雇用状況・生活環境等にきわめて大きな影響を与えており、その実情をも踏まえた移民の社会的包摂のための処方箋づくりが必要となってきている。研究代表者・研究分担者は、そのための文献研究・実地調査のための体制整備を進めており、令和4年度にはその成果の一部を公表する準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に入って、国内外の移動制限は総じて緩和されてきており、令和3年度に予定していた研究会実施・東南アジア諸国での宗教政策実地調査を、令和4年度中に実施することとする。また、調査対象国を東アジア諸国に広げることも検討中である。国内における宗教制度の実相に関わる調査も、令和4年度中に進める予定である。調査実施のための調整は、研究分担者により進捗中である。これら実地調査と令和3年度中に進めている立憲主義的宗教制度及び宗教調和制度の文献研究をふまえて、規範的宗教制度理論構築のための基本的作業を行い、その成果を令和4年度中に公刊することを目指す。 また、本研究の主要課題である、ネーションによる移民包摂・多宗教統合の正否の解明については、法哲学・政治哲学におけるリベラル・ナショナリズムの諸議論を、社会学を中心とするネーション論の研究動向を展望しつつ、再構成する論考を研究代表者が準備しており、令和4年度前半に公刊する予定である。これを基礎として、令和4年度中に、移民の社会的包摂の規範理論を包括的に提示する論考を公刊し、研究代表者の属する諸学会にて令和5年度中に報告することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、新型コロナウイルス感染症流行とその下での移動制限等で、研究会開催(とくに専門家を招いたもの)及び海外での実地調査を見送らざるをえなかったことにより、研究計画にやや遅れが生じた結果生じたものである。 この次年度使用額と令和4年度所要額は、主として、令和3年度に計画していた国内外での実地調査を令和4年度に実施するとともに、調査対象国を東アジア諸国に拡大し、あわせて新型コロナウイルス感染症禍の下での移民の社会的包摂に関わる調査を国内外で実施するために使用することを計画している。
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Research Products
(5 results)