2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01112
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 展彰 大阪大学, 社会技術共創研究センター, 特任助教(常勤) (40883210)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 法的因果関係 / 因果関係 / 介入主義 / 反事実条件文 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度となる2021年度は、本研究の理論的基盤の構築をするべく、文献渉猟を中心とした研究を行い、本研究と関連する論文の執筆および口頭報告を行った。 第一に、哲学的因果関係論における介入主義に関連した基礎文献(James Woodward, Making Things Happen: A Theory of Caual Explanation, Oxford Universiy Press, 2003; Joseph Y. Halpern, Actual Causlity, MIT Press, 2019; Judea Pearl, Causality: Models, Reasoning and Inference, Cambridge University Press, 2000)の精査を行った。 第二に、介入主義に関連した基礎文献の精査を行う中で、本研究を遂行するためには、哲学的因果関係論における反事実条件説を参照した法的因果関係の検討を優先的に進めた方がよいと思われたため、反事実条件説に着目した理論を整理し、論文(「法的因果関係における反事実条件文の法理学的検討(一)」※(二・完)は2022年5月末に発行予定)を執筆した。 第三に、本研究と関連する口頭報告(①「AI社会における「心理的因果関係」:AIの判断は人間の行為の原因となりうるか」(理化学研究所革新知能統合研究センター国際シンポジウム:AI時代を生き抜く総合知としての身心の可能性)、②「法的因果関係の考え方とサイバネティック・アバター」(第5回CAS研究会「複数の『身体』と法的責任」))を行った。これらの口頭報告では、先端科学技術をめぐって法的因果関係論が提起する問題点を示し、本研究が有する発展性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、介入主義を対象とした基礎文献の精査により理論的基盤を構築することであったが、順調に文献の精査を進めることができ、おおむね目標は達成できた。もっとも、文献研究の成果の口頭報告や論文の公刊には及ばなかったが、次年度(2022年度)に2件の口頭報告が決定しており、論文の執筆と並行して進めることができると考えている。 また、反事実条件説に着目した理論的整理は、もともと本研究の2年目に計画されていたものである。そのため、順番は前後したものの、最終年度の計画および本研究全体の研究方針に与える影響はない。 加えて、本研究に関連する口頭報告を通じて、本研究の発展性を示すことができた。 以上を踏まえ、本研究はおおむね順調に進んでいると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2022年度は、2021年度に実施した文献精査の成果について、予定されている口頭報告等を通じて批判を仰ぎ、射程と有効性を確認したうえで論文を公刊する予定である。 あわせて、2022年度前半は介入主義の因果関係論について、法的な観点とりわけ裁判制度に照らした批判的検討を行い、法的因果関係論に介入主義を導入するにあたっての問題点の抽出と理論的対応を試みたい。2022年度は法的因果関係が論点となった裁判例の収集を進め、本研究を通じて構築される理論の有効性の精査に向けた準備を進めたい。 なお、当初の研究計画においては、海外での聞き取り調査を計画していたものの、新型コロナウイルス感染症の状況が流動的なため、国内外の状況に照らして実施の可否を判断する。
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Causes of Carryover |
購入した書籍の一部について市場価格より安価に購入することができたため、次年度の書籍購入費に充当することにした。
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