2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K01112
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 展彰 大阪大学, 社会技術共創研究センター, 特任助教(常勤) (40883210)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 法的因果関係 / 単称因果関係 / 介入主義 / 因果モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究第二年度となる2022年度は、介入主義を応用した法的因果関係論の理論的基盤を構築し、成果をまとめた研究会及び学会における口頭報告並びに論文の執筆を行うとともに、構築した理論的基盤の有効性検証に向けた論点整理を行った。 第一に、研究初年度の2021年に進めた文献精査の成果を踏まえ、哲学的因果関係論における介入主義、とりわけ単称因果関係の理論として有力なJoseph Y. Halpernの理論を批判的に検討した。その結果、単称因果関係の存否を判断するためにHalpernが導入する通常性概念は、因果関係のメカニズムが不明な事例において機能しないことが明らかになった。そこで、通常性概念に代わり法適合性概念を導入することでHalpernの理論を修正し、本研究の目標の一つである介入主義を応用した法的因果関係論の理論的基盤を構築した上で、従来の法的因果関係論において法的因果関係存否の判断が困難とされてきた事例で機能することを確認した。この成果については、「介入主義を応用した法的因果関係論の構想」と題して地域研究会である法理学研究会における予備的な口頭報告を経て2022年度日本法哲学会学術大会における口頭報告を行うとともに、同タイトルの論文(阪大法学72巻6号136-98頁)を執筆した。 第二に、上記の理論的基盤について、民事訴訟手続の観点からの有効性検証に向けた論点整理を行うとともに、事例を用いた有効性検証に向けた裁判例(東大ルンバール事件、新潟水俣病事件、イタイイタイ病事件、四日市ぜんそく事件等)の収集及び論点整理を行った。 その他、本研究と関連して九州法理論研究会において口頭報告(「法的因果関係の法理学的検討:ハート=オノレから介入主義へ」)を行った。この口頭報告は、本研究を含む法的因果関係に関する研究代表者による研究を総合したものであり、本研究の位置づけを俯瞰的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施状況を踏まえた第二年度の目標は、哲学的因果関係論における介入主義の理論を応用した法的因果関係論の理論的基盤の構築及びその有効性の検証であった。第二年度に実施した研究並びに口頭報告及び論文によって、おおむね目標は達成できたと考えている。もっとも、残された課題として訴訟手続の観点及び具体的事例を踏まえた有効性の検証が指摘できるが、次年度(2023年度)の研究項目として予め設定されているものであり、本研究の全体的な研究方針に与える影響はない。 また、本研究に関連する口頭報告を通じて、従来の法的因果関係に関する研究を踏まえた本研究の位置づけを明確化できた。 以上を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展していると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
第三年度かつ予定では研究最終年度となる2023年度は、第二年度(2022年度)に構築した介入主義を応用した法的因果関係論について、訴訟手続の観点及び具体的事例を踏まえた有効性の検証を行い、必要な理論的修正を加える。これによって、自然科学的因果関係論と判断枠組を共有した法的因果関係論を示すとともに、介入主義を用いた法的因果関係の構造の解明を試みる。 第二年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、海外渡航が困難であったため予定されていた国際的な研究交流には着手できなかったが、国際会議での口頭報告及び英語論文の執筆を通じて、研究成果の国際発信に努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた海外渡航が困難であったため、次年度の海外渡航及び研究成果の国際発信に必要な経費に充てることとした。
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Research Products
(4 results)