2023 Fiscal Year Research-status Report
The Role of Freed Slaves in Roman Law of Contract
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21K01114
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
五十君 麻里子 九州大学, 法学研究院, 教授 (30284384)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 解放奴隷 / ユスタ事件 / ローマ古典法 / 信託遺贈 / 扶養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は、2018年度以来の研究で得られた解放奴隷に関する知見を、1940年代から多くのローマ法学者が研究対象としてきたユスタ事件にあてはめた論考を、ローマ法分野では世界最高峰の学術雑誌Zeitschrift der Savigny-Stiftung fuer Rechtsgeschichte. roemische Abteilung 140 (2023)に、掲載することができたことである。また、同じテーマで日本語でも査読論文とし、ローマ法雑誌第5号に掲載された。 ベスビオ火山の噴火によって埋没したヘラクラネウムで発見された蝋板史料に、少女ユスタを原告とし、解放奴隷であったユスタの母の元主人の未亡人であるテミスを被告とする裁判の資料が残されている。これまでユスタを生来自由人であるとする陳述書はユスタ側の、同人を解放自由人であるとの証言はテミス側の証書であるとされてきたが、テミスの婦女後見人がユスタを生来自由人であると証言し、テミスを裏切ったかに見えるなど、多くの謎が残っていた。そこで、本研究では、ユスタはむしろ解放自由人として、母の元主人の信託遺贈に基づき、寡婦テミスの扶養を受けるべく訴訟を提起したのであり、これら証言はかような原告の主張を退けるための、テミス側の証言であることを解明した。 また、このほか世界のローマ法学会において活発な意見交換を行い、ローマ法学界の展開と同分野における日本のプレゼンス向上にも寄与した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の過程でユスタ事件と出会い、これまで誰も思いつかなかった解釈を説得的に展開し、世界最高峰の学術誌に掲載することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解放奴隷に関する研究を今後さらに進展させ、次の研究課題である「解放奴隷のローマ法史ー法主体としての庶民の群像」へと繋げていく。
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Causes of Carryover |
他の資金を組み合わせることで、効率的な予算執行を行い、執行額以上の効果を得ることができたため、次年度に残りの額を執行し、さらに本研究を充実させる。具体的には昨年度末に発行された書籍の購入、国内外での学会参加、発表、講演等に充てる。
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