2021 Fiscal Year Research-status Report
A Legal Theoretical Inquiry into the Rule of Law: The Case of Japanese Law
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21K01116
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
郭 舜 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30431802)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 法の継受 / 法典整備 / 近代化 / 法のクレオール / 法の支配 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本における法の継受と、法律家(学者および法曹)共同体における「法の支配」の理念の受容との関係を探るため、これに関わる分析の基礎となる素材としての文献の収集・分析作業を行った。収集した文献の検討を通じて、次のことが明らかとなりつつある。まず、明治期以降における法典継受・学説移入のありかたが、徐々に明らかになりつつある。 この過程は、決して西洋の法典・法制度・学説などの盲目的な移入によるものではなく、日本の思想伝統に対する自覚に支えられた主体的な性格をもつものだった。そこでいかなるかたちでの主体性の発露が見られたかについては、長谷川晃の「法のクレオール」の概念を参照しながら整理することが有益だと考えられる。他方で、明治期における法典整備が、不平等条約の改正交渉をはじめとして、日本が近代国家として列強に伍していくための手段であったという側面も否めない。 ここから課題となるのは、伝統の再解釈という主体的な関わりと、政治体制の近代化を目的とした手段的関わりという、法の継受に見出される二つの側面が、その後に与えた影響を検証することである。内田貴が指摘するように、日本の伝統を西洋法学によって正当化するという努力は、いつしか西洋法学という「土俵」を無視して伝統を振りかざして異論を圧殺するという態度にすり替わっていった。これと法の継受との関係を明らかにしなければならない。 以上の研究成果の一部については、国内の研究会などで意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、学会・研究会の場を通じた意見交換が十分であったとはいいがたい。他方で、資料収集を通じて想定よりも多くのことが明らかとなっており、今後の研究の進展が見込まれる。したがって、全体としては、進捗状況はおおむね順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
明治期以降の日本法学のありかたについて、引き続き資料収集・検討作業を行う。これに加えて、比較対象とするドイツにおける法の継受やナチ体制における法運用の実態、戦後の反省についても資料収集・分析を本格化させる。 新型コロナウイルス感染症の状況によっては、学会・研究会を通じた意見交換を活発化させ、研究のさらなる展開の手がかりを得る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内・海外ともに学会・研究会のための出張が困難となったため。来年度、状況が改善し次第、旅費として使用する予定である。状況が変わらない場合には、資料収集に当てる。
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