2022 Fiscal Year Research-status Report
道徳的原理に訴える法解釈方法論の研究―新オリジナリズムをめぐる議論との対比から―
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21K01120
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
早川 のぞみ 桃山学院大学, 法学部, 准教授 (50531852)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 法解釈方法論 / 新オリジナリズム / 道徳的解釈論 / R.ドゥオーキン / R.アレクシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、法とは個人の権利や正義といった道徳的原理の実現であるとする道徳的解釈論の意義と可能性について解明することにある。本研究では、アメリカ合衆国における裁判事例を手掛かりにしつつ、一方でR.ドゥオーキンやR.アレクシーの道徳的解釈論と、他方で法とは確定的ルールであり、法解釈とは制憲者意思の解明であるとするオリジナリズムという対立的な解釈論を比較し、理論的・実践的な視座から総括的に考察する。 2年目にあたる2022年度では、①昨年度に引き続き、道徳的原理の役割を重視するR.アレクシーの法理論の全体像に関する文献調査と検討を継続するとともに、本研究のもう一つの柱であり、また本年度の研究計画の中心でもある、②近年活発に展開されるオリジナリズムの新たな議論動向についての研究を行うことを目的とした。まず、①に関しては、法の本質に道徳的な原理が必然的に含まれるとする非法実証主義的な基本的な立場をとるアレクシーの法理論の特徴について、彼の近著等を手掛かりとして確かめることができた。また、②に関しては、オリジナリズムの中でも厳格な立場を採る、A.スカリア元連邦最高裁判所判事やL.E.ソラムの議論等を取り上げて、これらが法を実証主義的に捉える解釈論の一つのタイプであることを確かめた。また、かかる新オリジナリズムの議論に触発されて提唱され、近時、注目される議論としてJ.M.バルキンの「生けるオリジナリズム」とW.ボウドとS.E.サックスの「〈オリジナルな法〉オリジナリズム」等を取り上げた。 ①と②に関しては、2022年度日本法哲学会学術大会シンポジウム「現代法実証主義」の中で、「アメリカ合衆国におけるオリジナリズムをめぐる新たな議論展開に関する一考察:法実証主義と非法実証主義の視座から」として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画の中心である、②最近のアメリカ合衆国におけるオリジナリズムをめぐる新たな議論展開の研究を遂行することができた。また、このオリジナリズムとの対比において、本研究の主題である道徳的解釈論が、法の本質に道徳的な原理が必然的に含まれるとする非法実証主義的な立場とは根本的に異なる法理論・法解釈論であることをアレクシーの議論を手掛かりに確かめることができ、この点で①も並行して研究を進捗することができた。これらについては、研究成果をまとめて学会での報告することができ、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本研究最終年度にあたり、初年度と2年目の研究を踏まえつつ、研究を取りまとめて公表することを本年度の最終的な目的とする。具体的には、一つに、アメリカ合衆国で道徳的な原理に訴えるアレクシーを中心とした道徳的解釈論と、またもう一つに、法を確定的なルールとして捉えて制憲者意思の解明を重視するオリジナリズム、さらに、オリジナリズムの動きに同調する新たな諸議論も含めて、これらの法理論・法解釈論の特徴と相違を明らかにした上で、アメリカにおける法(特に憲法)の解釈方法論の分布図式を整理し、その上で、その中での道徳的原理に訴える法解釈論の意義と可能性を最終的に考察する。
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Causes of Carryover |
本年度は2022年7月にルーマニア(ブカレスト)で開催されたIVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)世界大会への参加を予定していたが、隣国のウクライナ情勢およびコロナ情勢を考慮して、参加を見送ることを判断した。なお、本年度の使用計画としては、国内で開催される研究会と、9月に開催されるIVRJ(法哲学・社会哲学国際学会連合日本支部)国際会議へ参加するための旅費に充てる。
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Research Products
(1 results)