2023 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ租税法に見る財産評価の法理論の構築ー不動産税を素材としてー
Project/Area Number |
21K01129
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
手塚 貴大 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 教授 (50379856)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 固定資産税 / 財産評価 / 空き家 / 法定外税 / 政策税制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドイツにおける不動産税に係る財産評価のあり方も踏まえつつ、わが国の固定資産税に係る現状と将来像に関する研究を行った。その際、考察の与件として、人の領域(居住地であり、固定資産の所在地)からの移動が重要であると考えられる。すなわち、市町村の基幹税目たる固定資産税の課税が人の移動に直面して機能性を維持しうるか、さらにその負担が人の移動にどの程度の影響を与えうるか、という問題がある。例えば、人が領域から離れることにより生ずる所有者不明土地、空き家は課税の実効性を殺ぐ可能性があるが、近時税制自体においてもその発生を防ぐための種々の措置が講じられたことに加え、民事上の制度、マイナンバーといったインフラを通じてもその解消ができる可能性がある。そして固定資産税は固定資産評価基準による全国統一的な評価方法を採用しているため、この点、財産評価の中立性は維持されるが、政策税制としての種々の特例措置が法律または条例上採用されることにより、税負担は必ずしも比例的ではない。とはいえ、固定資産税負担それ自体による人の移動の可能性については、過大なものと見るべきではない。 そして、固定資産評価基準による評価についても、複雑であり、相応のコストがかかると考えることができる。そこで、いわゆる平米単価方式を利用した簡易な評価方法に変えていくことも理論上は不可能ではないと考えられる。 次に、研究期間全体としては、ドイツ不動産税の改革を踏まえた財産評価のあり方を中心に研究を行い、その制度およびそれに関連する議論の動向を検証した。その他にも、空き家対策と固定資産税との関係、同じく財産評価が問題となる相続税に関する近時の議論として配偶者居住権の評価、さらには、周辺問題として国際相続・贈与に係る二重課税問題等も検討を行った。
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