2021 Fiscal Year Research-status Report
緊急事態における法の研究-ドイツの歴史的経験を主な素材として-
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21K01130
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
阿部 和文 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40748860)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法 / ドイツ / ヴァイマール憲法 / ヴァイマール憲法48条 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)①当該年度の前半は、在外研究のためドイツ、ベルリンに滞在していた。この時期には、先ず、現地において本研究課題に関する資料収集を行った。資料収集においては、日本国内の図書館等には収蔵されていない、ヴァイマール憲法第48条を主題とする1920代~30年代前半の学位論文を主たる対象とした。理由としては、論述の精度をひとまず措くならば、当時の学説の状況を把握するうえで簡便であること、又、細かな解釈上の論点(著名な論者による文献では必ずしも詳しく扱われていないもの)につき踏み込んだ分析がなされている可能性があること、が挙げられる。 ②又、ヴァイマール憲法第48条に関連する戦後の二次文献(例えばAchim Kurz、Peter Blomeyer、Jasper Finke等によるモノグラフィ)を対象として、当時の学説および研究の概況について調査を行った。 ③更に、この時期には、ドイツにおける新型コロナウイルス対策を主題とする論考「ドイツ感染症予防法の2020年11月改正― コロナ規制の「カタログ化」」を、他の研究者と共同で執筆し、公表した。厳密には本研究課題が初年度に対象とする時期とは異なるが、感染症の蔓延という予期せぬ事態に対するドイツ法の対応を詳細に調査・検討する機会となった。 (2) 当該年度の後半は日本に帰国し、本研究課題に関する資料の収集・検討を進めた。①先ず、研究の出発点として、緊急事態(法制)をめぐる近年の邦語文献(憲法学には限定されない)を検討し、現在の日本の問題状況の把握に努めた。②次に、(1)②の作業を継続した。③更に、同条に関する一次文献、具体的には、リヒャルト・グラウ、クルト・ヘンチェル、ヨハネス・ヘッケル等の著作を対象とし、同条の解釈をめぐって夫々がいかなる立場にあり、又、相互にいかなる対抗関係にあるのかについて検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の前半は、新型コロナウイルス対策のため図書館のサービスが制限されており(そのため一定以上古い資料については利用不可とされた)、本研究課題に関する資料収集はサービスが全面的に再開された後にしか行えなかったため、当時の学説に関する検討の作業が大きく停滞した。主にこのことを原因として、当該年度中にヴァイマール共和国期の学説に関する一定の見通しを得るという、当初の目標を果たすことができなかった。従って、(3)の区分としている。 もっとも、「概要」に表記の通り、現代のドイツ法を扱った論考を一点公表するに至っているため、当該年度において研究が一切進展しなかったというわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、当該年度に収集した文献の検討を引き続き行い、それによって、ヴァイマール憲法第48条の解釈論をめぐる学説の概況および相互の対抗関係を明らかにする作業を進める。 未読となっている資料群の検討を当該年度後半よりも集中して進め、既に検討を進めているグラウ、ヘンチェル、ヘッケル等の所説との比較を行い、もってヴァイマール憲法第48条の解釈論をめぐる全体像を明らかにし、その成果を論考として執筆・脱稿したく考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた原因としては、主に、①当該年度に購入予定であった書籍の発売が予定よりも遅れたこと、②国内外の他の研究機関に出向いての資料収集が新型コロナウイルス対策のために不可能となったこと、が挙げられる。 本年度の使用計画としては、上記①については、対応する書籍が刊行され次第それらを購入することとし、又、上記②については、短期間での状況の改善が見込めないため、代替手段として複写物の取り寄せサービスを活用して資料収集を行いたいと考えている。
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