2022 Fiscal Year Research-status Report
緊急事態における法の研究-ドイツの歴史的経験を主な素材として-
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21K01130
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿部 和文 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40748860)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法 / ドイツ / 緊急事態 / ワイマール憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、下記の作業に従事した: (1)先ず、前年度に収集した資料、とりわけヴァイマール憲法第48条を主題とする1920代~30年代前半の学位論文、の分析を進めた。このうち1930年代の文献の中には、ヴァイマール憲法下での学説を回顧・整理するものが見られ、同条をめぐる解釈論を概観する上では特に有益であった。なお、この作業に関連して、当該年度にはベルリン国立図書館に赴いて、文献の追加収集を行っている。 (2)次に、当該年度は、ヴァイマール憲法48条のうち5項に関する調査を行う、という課題を新たに設定した。同項は、ライヒ大統領及びラント政府の非常事態における権限について「詳細はライヒ法律で定める。」と定めた規定である(もっとも、同項に該当する法律は1933年までの期間を通して制定されなかった。)。この規定につき、具体的にどのような法案が作成され、又は提案が為されたのか、という課題を設定し、これに関する調査・検討を進めた。なお、この作業に関連して、当該年度にはドイツ連邦公文書館に赴いて、行政文書の収集を行っている。 調査の結果、現時点では、少なくとも、①リヒャルト・グラウ(及びローベルト・ピロティ)による提案、②ハンス・ナヴィアスキーによる提案、③ライヒ内務省において準備されていた法案、の三者が存在することが確認されている。更に、④クルト・ヘンチェルの起草にかかる法案が存在するとの情報が得られているが、実際の条文についてはいまだその存在を確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該期間のうちに、本研究課題に関する研究成果を論稿の形で公表することはできなかった。 原因は諸点存在するが、研究課題に内在する原因としては、ヴァイマール憲法48条をめぐる解釈論上の論点が多岐にわたること、同条をめぐる解釈学説の分岐が複雑であること、及び、その解釈学説の分岐が論者の方法論的前提とも関連する場合があること(従って当時の公法学全般に対する目配りが必要であること)、が挙げられる。特に、同条をめぐる主要学説に関する論稿が脱稿に至らなかった原因は、この点に求められる。 以上の理由により、(4)の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究課題の最終年度に当たるため、「研究実績の概要」(1)および(2)に表記の主題につき、それぞれ論稿を取りまとめて公表を行う作業に傾注する。 又、このうち(2)については、引き続き他の法律案や提案が存在するのかに関する調査を継続し、可能であれば、ヴァイマール憲法48条5項をめぐる諸構想につき網羅的に比較・検討を行う論稿を公表したく考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度に公刊予定であった複数の図書の発売が遅れ、当該年度のうちに支出を行うことができなかったため。
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