2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K01137
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高作 正博 関西大学, 法学部, 教授 (80295287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 私的生活の尊重の権利 / プライバシーの権利 / 親密圏 / 法律の留保 / 監督機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に実施した研究は、日本の判例の再評価、また、フランスや欧州の「私生活の尊重の権利」に基づく日本法の分析である。 第1に、最高裁昭和44年12月24日大法廷判決や最高裁昭和61年2月14日判決の再評価である。これらは、肖像権に対する制約を厳格に統制しようとする傾向を示していたが、後に、最高裁平成20年4月15日決定により、その先例的価値が否定されたかに見える状況となっている。現に、調査官解説は、昭和44年判決を「事例判断にとどまる」と指摘する(鹿野伸二「判例解説」『法曹時報』63巻11号(2011)2784頁)。しかし、両者の違いは事案の違いに由来するものであり、肖像権ないしプライバシー権の価値を、社会状況の変化により不当に引き下げる議論には疑問が生じることが明らかとなった。 第2に、フランスの「私生活の尊重の権利」の解明である。前年度までの研究により、既に、フランス法における「私生活の尊重の権利」の根拠(民法典第9条、刑法典の各規定、フランス第5共和国憲法第66条第2項、1789年人権宣言第2条。ヨーロッパ人権条約第8条も参照)、法律による自由の保障の詳細(例えば、「情報活動に関する2015年7月24日法律第2015-912号」等)、情報収集活動に対する監督機関の存在(「自由と勾留」判事、「全国治安傍受監督委員会」(CNCIS)、「国家情報技術監視委員会」(CNCTR)、「情報処理および自由に関する全国委員会」(CNIL))等が明らかとなっていた。プライバシー権を重視する傾向はEUにも見られ、「忘れられる権利」をめぐる議論はその傾向をよく表している。最終年度は、これらの研究成果を踏まえ、日本の立法及び判例の状況について、いわゆる「法律の留保」(法律の根拠に基づく制約)、また、情報収集機関に対する統制のいずれについても、不十分であるという点を明らかにすることができた。
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