2023 Fiscal Year Annual Research Report
リスク社会における国家賠償制度の再定位―民事不法行為法との共進化
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21K01140
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| Research Institution | Hokkaido University |
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Principal Investigator |
米田 雅宏 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00377376)
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| Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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| Keywords | 国家賠償法 / 安全配慮義務 / 危険管理責任 / リスク社会 / 職務義務違反説 / 動的システム論 / 民事不法行為法 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度は、拙稿「危険管理責任の再定位（上）（下）―義務違反構成の試み」太田匡彦ほか編著『行政法の基礎理論―複眼的考察』（日本評論社、2023年）226頁以下〔初出2022〕、同「建築確認処分と『国家賠償法の解釈の構造』―最判平成25年3月26日集民243号101頁を素材として」大貫裕之ほか編『稲葉馨先生・亘理格先生古稀記念 行政法理論の基層と先端』（信山社、2022年）419頁以下に続く国賠研究の総まとめとして、国家賠償法１条が定める違法概念を「職務上の義務」の重層構造から体系的に理解する方法について検討した。
研究実績の詳細は成果報告書に譲ることとし、結論部分のみ示せば以下の通りとなる。国家賠償法１条の違法概念は、公務員の職務上の義務違反と解されるところ、同義務概念については３つの層に分けて理解する必要がある。第１の層は、「適法な行為を行う、公務員法上の職務義務」（対内的義務）、第２の層は、対内的義務が公務員の法令遵守義務を通じて対外的義務に転化した、「適法な行為を行う職務義務」（対外的義務）であり、これはさらに第３層目として二つのレベルに区別される。一つは、根拠法上課せられる職務義務（狭義の職務義務）で、行政機関の公務員が負う「適法な行為を行う職務義務」と同義のもの、もう一つは、国賠法上課せられる職務義務（広義の職務義務）で、公権力の行使による損害の発生後、個別具体的ケースにおいて対私人（被害者）との関係で、行政機関の公務員ないし行政主体が負う「危険を回避すべき職務上の義務」である。この３層からなる職務上の義務概念の理解に基づけば、学説上主流の「公権力発動要件欠如説」とも整合的に国賠違法を理解することが可能であるとの結論に至ったものである。
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