2022 Fiscal Year Research-status Report
日本国憲法における婚姻及び婚姻の自由の意味についての分析
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21K01142
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白水 隆 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (70635036)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 婚姻の自由 / 複婚禁止の憲法適合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に深く検討ができなかった、カナダにおける複婚禁止の憲法適合性について研究を進め、その成果を現在、論文にまとめている段階である。また、研究実施計画書では当初2024年度に予定していた日本における複婚をはじめとした伝統的ではない婚姻形態の検討を2022年度に前倒しし、日本への示唆も同時に検討した。その理由として、2022年度は、本研究課題である日本国憲法24条の意義につき先行して論文や学会等にてにてその一端―-具体的には、24条は婚姻制度の構築等につき国家に立法裁量を与えているものの、14条1項が規定する平等権と整合するよう24条を解釈することで婚姻の自由により意義を持たせることができるという仮説―-を論じる機会に接し、そこで考察した理論の応用性を検討すべく、複婚の事例につき、同理論の適用可能性を論じる必要性が生じたからである。 他方で、カナダと日本では、婚姻概念、とりわけ、宗教的な理由を背景としたカナダの複婚と日本におけるそれとでは分析の方法が異なる。例えば、カナダでは複婚の禁止は一次的には信教の自由の問題となるが、カナダの裁判所は複婚の禁止を平等権の問題と位置付けている。一方、日本では、複婚の禁止が直接的に争われた事例が存在しない。そのため、2022年度は、次年度以降の研究の布石として、複婚の禁止をめぐる憲法上の論点を抽出し、カナダにおける議論を踏まえた上で、日本では24条等の観点からどのように議論を組み立てることができるのか考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度8月より在外研究を開始したため、その事前及び渡航後の準備等もあり、当初の予定より進捗状況はやや遅れている。もっとも、2022年度に執筆した論考は次年度前半には公表される予定であることから大幅な遅れとはなっておらず、上述のように、次年度以降の研究の下地となっていることから、おおむね順調に進展しているとも言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画書に従い、2023年度は日本各地で争われている同性婚訴訟の比較分析を行う予定である。現時点で3件の地裁判決(札幌、大阪、東京)が下され、更に2件の判決(名古屋、福岡)が下される見通しであることから、裁判所による24条解釈の比較検討が可能となり、婚姻の自由の意味内容を更に分析できることが期待できよう。
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Causes of Carryover |
2022年8月より在外研究を開始したことから物品費の購入は当初の予定から変更が生じ、また、在外研究先での国際学会において報告の機会を得たことから渡航費の支出も生じなかった。他方で、2023年度は引き続きカナダ内外での国際学会等での報告を計画しているため、物品の購入も含め、在外研究中の研究を遂行するための使用を予定している。
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