2023 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Analysis on the Legal Response to Hateful Speech and Conduct
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21K01145
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 表現の自由 / ヘイトスピーチ / ヘイトクライム / 差別 / アメリカ憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023(R5)年度は、まず、前年度から引き続き、ジェノサイド扇動表現、すなわち特定の人種等の属性を共有する集団に対する殺害や暴力の扇動表現の規制に関する米国と日本の比較法研究を継続し、その研究成果を、2023年6月の国際学会において報告した(後掲10の学会発表欄参照)。当該報告では、米国のジェノサイド条約実施法のジェノサイド扇動表現の禁止規定と表現の自由の保障との整合性をめぐる議論と、ヘイトスピーチ規制に関する日本の最高裁判例(最三判2022年2月15日)と学説とに照らしつつ、日本法の下においてもジェノサイド扇動表現については規制の余地があることを指摘した。また、当該研究をとりまとめた日本語の論文も刊行に至った(後掲10の雑誌論文欄参照)。 また、当該年度には、アメリカのヘイトクライム規制に関する調査及び分析も行った。具体的には、連邦法及び州法にみられる、人種等の事由を理由として制定法上の犯罪を遂行した際に刑罰を加重するヘイトクライム刑罰加重法と、人種等の属性に基づく威嚇行為や嫌がらせ行為を禁止する法律とを網羅的に調査したうえで、憲法上の問題点に関する判例及び学説の検証の検証を行った。当該研究を通して、米国においては、純粋な表現規制としてのヘイトスピーチ規制が表現の自由の保障に反すると解されている一方で、人種等を「理由とした(because of)」一定の言動に対する刑罰賦課については許容されていることを確認した。当該研究の成果としての論文は、未だ公刊には至っていないが、2024年度には刊行に至る見込みである。 なお、当該年度には、研究対象をさらに広げる形で、国内のヘイトクライムの記憶の継承をめぐる法的問題に関する研究も実施したうえで、ハーグで開催された国際ワークショップでの招待講演を行った(後掲10の学会発表欄参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で当初予定していた課題の研究自体はおおむね実施することができているが、一部の研究成果に関する論文刊行(日本語)と国際学会での報告が次年度に持ち越しとなったため、「やや遅れている」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、米国のヘイトクライム規制に関する研究をとりまとめた論文の刊行を予定しているほか、日本国内のヘイトスピーチ規制に関する議論を総合的に取りまとめたうえで、欧米のヘイトスピーチの専門家らとともに国際学会で報告を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い初年度(2021(R3)年度)の研究活動が大幅に制約されることとなり、以後、とくに国際学会における報告の予定が後ろ倒しとなり、最終的にこのたびも次年度への繰り越しとなった。次年度(2024(R6)年度)には、必要な資料の購入費用と本研究の集大成としての国際学会における報告のための出張旅費とを支出することを計画している。
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Research Products
(3 results)