2021 Fiscal Year Research-status Report
河川管理の法的意義--総合的水害対策法制の新構想のために--
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21K01146
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
福重 さと子 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (20551485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 実宗 駒澤大学, 法学部, 准教授 (50805794)
重本 達哉 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (60584042)
近藤 卓也 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (70756410)
嘉村 雄司 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (90581059)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水害 / 河川管理 / 行政責任 / 水害保険 / 災害応急対応 / 法制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水害の激甚化・頻発化の下でいかなる法制度を構築するべきかを検討するものである。研究分担者とともに、ドイツ、アメリカ、フランス等の外国における類似の法制度を比較対象として検討し、また、水工学の知見をもつ研究者との連携を行う予定である。 本研究の研究代表者、研究分担者は、これまでも連携し、法律学の観点から水害に関する研究を行っていることから、当年度も、それまでの継続としての研究活動をそれぞれ行った。それに加え、相互の連携を実現するために、オンライン会議のツールを用いて、3回の研究会を実施した。5月28日には、研究の目的を確認し、研究者各人の課題を相互に確認した。9月9日には、福重がフランスの水法の概況について、研究成果の報告を行った。この研究において、フランスでは、水害の頻発化を受けて法制度の手直しを行っているが、とくに、敷地の私的取引を制限する公物制度の観点からの河川法の見直し、また、河川管理に関する計画制度の見直しが行われていることを示した。12月21日には、重本氏が、洪水対策の観点から見たEUの水法およびドイツの水法の概況について、研究成果の報告を行った。この研究では、EUの水法がドイツの水法に影響を与えているということから、EU水法の最新動向とそれに影響を受けたドイツ水法の最新動向が明らかにされた。そのなかで、ドイツでは、連邦レベルの水法を州法によって逸脱する可能性があることから、州法の研究をする余地があることが指摘された。福重、重本氏の研究成果は、2022年度以降に刊行予定の書籍において発表する予定である。さらに、研究分担者の近藤氏は、比較法の前提的な研究として、日本における都市計画行政の行政責任に関する研究を行い、同じく2022年度以降、法律学系の雑誌に発表する予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、1年目は本研究の研究代表者と研究分担者が、各人が得意とする比較対象国における河川管理のあり方について研究を進めることとなっている。研究代表者、研究分担者ともに、今年度は、研究に必要な資料収集を行い、また、海外における研究調査に必要な準備を行った。その結果、今年度は、2回の研究報告会を実施することができた。また、上述のように、研究成果の発表も実現する見込みである。 研究代表者については、今年度、フランスにおいて、河川管理について多様な行政機関が関与していることを明らかにしたところである。そのなかで、フランスについては、2014年の法律によって、洪水予防のための工事の実施について、基礎的地方公共団体の権限が強化されるなど、より最新の法制度の検討をすることが課題として示された。ドイツ、アメリカについても、洪水対策については州法が大きな意味をもっているが、その研究の余地があることが明らかになった。また、重本氏の研究により、独仏法の研究をするにはEU法に目配りすることが必要であることが示された。このように、今年度の研究により、より明確な課題を明らかにすることができた。 当初より予定している、水工学との連携については、今年度は実施できなかったが、それは、より具体的な研究を進めてから行うことが望ましいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は2年目となるが、各自、今年度具体化した研究課題の必要に応じて、補足的に文献研究を行う。フランスについては、2014年の法改正を中心に、その影響についての研究を行う。ドイツについては、EU法の影響、水管理法の最新の改正、公物法の観点からの水害防止のあり方を検討する予定である。アメリカ法については、連邦にとどまらず州法の研究を行い、また、水害保険の実際の機能についての検討を行うこととしている。当初の予定では、2022年度は、比較法の比較対象国に渡航して調査研究をすることとしているが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、海外に渡航することが難しい状況であり、実施することができるとはいいきれない状況にある。渡航が難しいときの代替的な研究方法を考慮しつつ、実施の必要性、実現可能性を見極めたいと考える。
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Causes of Carryover |
研究代表者、研究分担者は、書籍の購入を予定していたが、所属機関によって別途交付された研究費が当初の予定よりも20万円ほど多く、また、他機関の助成金を延長して使用することとなったため、結果的に、支払額を使い切ることができなかった。 この助成金分があるため、翌年度分の請求額はその分減額して請求することとし、翌年度の研究は、ほぼ予定通りに行うつもりである。
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