2021 Fiscal Year Research-status Report
「世界から見た」/「世界へ伝える」日本の憲法研究の意義・傾向・課題の発見
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21K01153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柳瀬 昇 日本大学, 法学部, 教授 (90432179)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 憲法 / 日本憲法研究の国際発信 / 海外での日本憲法研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、本格的な収集作業を開始した。当初の計画とは異なり、電子データベースを利用した米国大学紀要・海外出版社刊行の単行書に所収された文献の収集から始めることにした。2022年1月10日から3月24日まで、米国University of California, Berkeleyの客員研究員として研究活動をする機会に恵まれたため、同大学及び同大学ロースクールに所蔵された日本の憲法研究に関する文献を収集することができた(その中には、非公刊の貴重な文献も含まれている)。 (2)諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査に関しても、同校の教職員の協力を得て、ベイエリアにおける日本憲法研究・教育の経緯について調査することができた。 期間中に発表した研究成果物としては、司法権の独立に関して近時にわかに注目されるようになった裁判官弾劾制度に関する検討と、外国の研究者から見た日本の刑事司法制度についての研究の分析が挙げられる。すなわち、前者として、現在係属中の罷免訴追事件に関連して、裁判官弾劾制度の意義・概要・課題について、学会主催の公開シンポジウムで口頭報告を行うとともに、論文としても発表した。ここでは、具体的な事案の検討ではなく、制度の分析に注力した。また、戦後のすべての弾劾裁判(現在係属中のものを除く)と、訴追には至らなかったものの弾劾が議論された事案の検討を通じて、司法権と政治部門との関係性について考察する英語論文を公刊した。後者としては、日本の刑事司法における素人と専門家の役割をめぐるErik Herber元教授(Leiden University)による著書についての書評論文を公刊した。ここでは、刑事司法における参加の意義の多様性に注目すべきであるということと、民事司法への参加の制度との比較の有用性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的にみて新型コロナウィルス感染症がいまだ収束していない状態であるため、当初予定していた国際学会での発表や海外調査活動は、残念ながら取りやめることとした。その代わり、所属研究機関の了解を得て、2022年1月10日から3月24日まで、米国University of California, BerkeleyのCenter for the Study of Law and Societyにおいて、客員研究員として研究活動を行うことができ、日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析及び諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査が想定以上に進展した。 日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、当初、2021年度中に着手する予定であった日本の大学紀要等に所収された文献収集は、2022年度に後回しにすることにしたが、その代わりに、難航が予想された電子データベースを利用した米国大学紀要・海外出版社刊行の単行書に所収された文献の収集を先に取り組むこととし、相当の進展を見ることができた。 したがって、必ずしも当初の計画どおりには進んではいないが、それに代わる研究の進展があり、それは次年度以降に計画していたことの先取りであるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関しては、前年度に着手した電子データベースを利用した米国大学紀要・海外出版社刊行の単行書に所収された文献の収集を継続するとともに、前年度において後回しにした日本の大学紀要等に所収された文献収集を進めることにしたい。また、日本の主要な憲法判例の英文テキストの整理も行うこととする(近時の最高裁判例の英文訳は、最高裁判所のウェブサイトで公開されているが、1969年以前の判例については対応していないところ、日本の憲法判例の英文テキストの整理ができれば、非日本語話者が日本の憲法判例の所在を容易に知ることができ、(二次資料ではなく)判決文の英訳の全文を直接読むことができるようになるだろう)。 (2)諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査に関しては、新型コロナウィルス感染症の収束状況次第ではあるが、所属研究機関の了解を得られれば、米国ないし欧州における海外調査を実施したい。 (3)「世界から見た」/「世界へ伝える」日本の憲法の研究・教育の意義・傾向・課題の解明に関しては、個別具体的な憲法学の現代的論点の研究を継続する(具体的には、司法権の限界等に関連する日本の判例理論の動向について検討することとしたい)とともに、引き続き、諸外国の研究者から見た日本の(あるいは、他のアジア諸国も含めた)憲法研究の分析を行うことを予定している。また、(1)に関して、現時点で収集した文献の分析作業を行い、傾向性を見いだすことができれば、それについても発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
世界的にみて新型コロナウィルス感染症がいまだ収束していない状態であるため、当初予定していた国際学会での発表や海外調査活動は、残念ながら取りやめることとした。そこで、次年度使用が発生した。これについては、次年度以降、新型コロナウィルス感染症が収束後に実施する国際学会での発表や海外調査活動のための費用に充てたいと考えている。
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