2022 Fiscal Year Research-status Report
「世界から見た」/「世界へ伝える」日本の憲法研究の意義・傾向・課題の発見
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21K01153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柳瀬 昇 日本大学, 法学部, 教授 (90432179)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 憲法 / 日本憲法研究の国際発信 / 海外での日本憲法研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、収集作業を継続している。今年度は、当初は昨年度に実施予定であったものの今年度に先送りした、日本全国の主要な大学の法学部等の紀要に収録された英文論文を収集した。そして、今後、各論文の内容を分析するための準備段階として、書誌情報のリストを作成した。また、日本の最高裁判所の憲法判例のうち、判決文の英文翻訳を入手できるものについて、その概要をまとめたうえで、その所在を示した資料をNihon University Comparative Lawの38号に掲載した。日本の判例は日本語で書かれているため非日本語話者がその原文を読解するのは困難である。近時の重要判例の多くは最高裁判所の公式ウェブサイトに英訳が掲載されているが、1969年以前のものは検索フォームから検索できないため、これで網羅することはできない。J. Maki、H. Itoh、L. Beerらによる著書や国際法協会の欧文誌にも憲法判例の英訳文があるが、その所在を一覧できるようにするとともに、判例の意義や概要をとりまとめた。これにより、外国の研究者が日本の憲法判例を研究する際に役立つとともに、日本の研究者が自国の憲法状況を諸外国に紹介する際にも貢献しうる。 上記のほかに期間中に発表した研究成果物としては、付随的違憲審査制を採るわが国において、訴訟当事者が第三者の憲法上の権利侵害を理由として法令等の違憲性を争いうるかという、憲法訴訟の重要論点について、近時の判例を指導的判例と比較して分析した「違憲主張の適格」を発表した。そのほか、北東アジアにおける憲法制定史に関するKevin YL TanとMichael Ng編著について、その意義や課題などを検討した書評論文を著し、国際ジャーナルに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、当初の計画では、2021年度に米国大学紀要・海外出版社刊行の単行書に所収された文献を、2022年度に日本の大学紀要等に所収された文献を、それぞれ収集する予定であったが、21年度中に米国研究機関での調査活動を行うことになったため、研究資源の都合上、21年度に22年度実施予定の作業を行い、21年度実施予定のものを22年度に実施することにした。22年度に、日本の大学紀要等に所収された文献の収集を無事に終え、最初の2年間の作業を完了した。 (2)想定外の円安と航空券・宿泊料の高騰のため、当初予定していた22年度中の国際学会での発表や海外調査活動は、残念ながら取りやめることとした。 (3)北東アジアにおける憲法制定史について書かれたKevin YL TanとMichael Ng編著Constitutional Foundings in Northeast Asiaを論評する書評論文を執筆する機会に恵まれ、その意義や課題について検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、米国大学紀要・海外出版社刊行の単行書に所収された文献(2021年度に収集作業を実施)及び日本の大学紀要等に所収された文献(2022年度に収集作業を実施)につき、主要なものはほぼ収集し終えたため、その内容の分析に移ることとする。また、それと並行して、紀要以外の逐次刊行物や単行書などに収録された外国語文献を収集するとともに、新たに発表された論文を補っていくこととする。 (2)諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査に関しては、米国ないし欧州における海外調査を実施したい。また、2023年6月にプエルトリコで開催されるLaw and Society Association, Annual Meetingに参加し、日本の裁判員制度の民主主義的影響に関する研究成果の報告を行う。5月末までに英語論文を完成させ、学会誌または紀要等に投稿する。また、日本の裁判員制度の憲法適合性に関する英語論文を推敲し、学会誌または紀要等に投稿する。 (3)「世界から見た」/「世界へ伝える」日本の憲法の研究・教育の意義・傾向・課題の解明に関しては、個別具体的な憲法学の現代的論点の研究を継続する(具体的には、裁判所・裁判官の民主的統制または人身の自由に関する論点を検討することとしたい)とともに、引き続き、諸外国の研究者から見た日本の憲法研究の分析を行うことを予定している。また、日本の憲法の国際的発信の前提として、日本の憲法解釈論の全体像について把握しておく必要があるため、解釈論を概括する図書の刊行も計画している。
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Causes of Carryover |
想定外の円安と航空券・宿泊料の高騰のため、当初予定していた2022年度中の国際学会での発表や海外調査活動は、残念ながら取りやめることとした。そこで、次年度使用が発生した。これについては、2023年度、国際学会での発表や海外調査活動のための費用に充てたいと考えている。国際学会での発表について、具体的には、2023年6月にプエルトリコで開催されるLaw and Society Association, Annual Meetingに参加し、研究成果の発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)