2023 Fiscal Year Research-status Report
「世界から見た」/「世界へ伝える」日本の憲法研究の意義・傾向・課題の発見
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21K01153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柳瀬 昇 日本大学, 法学部, 教授 (90432179)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 憲法 / 日本憲法研究の国際発信 / 海外での日本憲法研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、2023年度は、作業の中心を収集から分析へと移した。具体的には、これまで収集した日本全国の主要な大学の法学部等の紀要に収録された英語論文の書誌情報と概要をリスト化した。また、日本の最高裁判所の憲法判例の英文翻訳に関する資料を、2023年度、Nihon University Comparative Law第38号に掲載したが、諸外国の複数の日本法研究者から有益な資料として認知されたため、その内容のアップデートを行った(2024年度に公表予定)。 (2)米国プエルトリコにおいて行われたLaw and Society Association 2023 Annual Meetingにおいて、Andres Harfuch教授の司会の下、The Saiban-in (Lay Judge) Trial System and Its Democratic Impact on Japanese Societyと題する研究報告を行った。これは、最高裁判所による統計調査やアンケート調査の結果等を分析したうえで、いわゆる裁判員法1条が定める裁判員制度の趣旨が実際に達成できていないとはいえないことを論証するとともに、裁判員制度には討議民主主義的な意義があるという主張が妥当であることを明らかにするものである。陪審制度研究で世界的にも著名な法社会学者であるValerie Hans教授が討論者を務め、研究代表者による研究報告を高く評価した。その内容を論文化し、Nihon University Comparative Law第39号に掲載した。そのほかに、マックス・プランク比較私法・国際私法研究所のRuth Effinowicz博士と交流する機会に恵まれ、ドイツにおける日本法研究の現状を聞き、本研究の意義を紹介する機会に恵まれた。 (3)日本の憲法の国際的発信の前提として、日本の憲法解釈論の全体像を把握するため、解釈論を概括する書籍として、『憲法』を執筆し刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関しては、当初の予定どおり、作業を進めている。データベースのイメージができつつあるので、これをどのような形態で発表するかについて、改めて検討している。 (2)2023年度は、国際学会における研究成果の報告を行うことができたほか、諸外国の憲法研究者や日本法研究者との交流を深めることもできた。しかし、旅費の都合上、予定していた諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査を行うことはできなかった。 (3)解釈論を概括する書籍を刊行することができた。これによって、日本の憲法解釈論の全体像を把握することができた。今後、国内及び海外の日本の憲法の研究・教育の状況について、的確な分析・検討を行うことができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)日本の憲法学についての外国語文献の網羅的収集・分析に関して、2024年度は、米国等の大学紀要や海外出版社刊行の単行書に所収された英語論文の書誌情報の整理と内容の分析を行い、リスト化するとともに、新たに刊行された英語論文の補充的収集を行う。 (2)諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査に関しては、2023年度に旅費の都合で断念した米国ないし欧州における海外調査を実施したい。また、2024年6月に米国デンバーで開催されるLaw and Society Association 2024 Annual Meetingに参加し、研究成果の報告を行うとともに、比較憲法を研究する諸外国の研究者と研究交流を行う予定である。 (3)「世界から見た」/「世界へ伝える」日本の憲法の研究・教育の意義・傾向・課題の解明に関しては、個別具体的な憲法学の現代的論点の研究を継続する(具体的には、死刑制度の憲法適合性などについて取り組むこととしたい)。
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Causes of Carryover |
想定外の円安と航空券・宿泊料の高騰のため、2023年度の直接経費の旅費では、国際学会における研究成果の報告と、諸外国における日本の憲法の研究・教育の現状の調査の両方を行うことはできなかった。国際学会での研究成果の報告を優先したが、旅費の余剰が生じた。これについては、2024年度に、国際学会での発表や海外調査活動のための費用に充てたいと考えている。具体的には、2024年6月に米国デンバーで開催されるLaw and Society Association 2024 Annual Meetingに参加し、研究成果の報告を行う予定である。
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[Book] 新世社2023
Author(s)
柳瀬昇
Total Pages
416
Publisher
『憲法』
ISBN
9784883843725
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