2021 Fiscal Year Research-status Report
国際紛争解決の司法化の諸相と限界:いわゆる「巻き込まれた問題」への対処の分析
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21K01159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 朋史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20613144)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フラグメンテーション / 司法的紛争解決手続 / 管轄権 / 適用法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の第1年目にあたる2021年度は、主にWTO紛争解決手続や投資家対国家紛争解決手続において、被提訴国が他の条約上の規則を援用してWTO協定や投資協定の適用排除の抗弁を主張するケースや、一般国際法上の違法性阻却事由を援用してWTO協定や投資協定違反の正当化の抗弁を主張するケースについて検討した。具体的には、第1にWTO協定や投資協定において、その紛争解決手続にいかなる問題についていかなる法を適用して判断を下す権限が与えられていると考えられるかについて、関連する規定や判例・学説の検討を通じて、分析を行った。第2に上記のような抗弁が主張されたケースにおいて紛争解決機関がいかに対応したかを検討し、そこで用いられたアプローチ(WTO協定や投資協定の柔軟な解釈、判断回避、他の条約上の規則や一般国際法上の違法性阻却事由の解釈適用等)や、これらのアプローチがとられた背景、およびその当否について分析し、両紛争解決手続の対応の比較検討を行った。以上の問題は、今般日本等の国がロシアに対して課しているいわゆる経済制裁措置の適法性が争われる場合、各紛争解決フォーラムにおいていかなる判断がなされ、またなされるべきかについて考える上でも重要な意義を有する。 なお、2021年度は英国のケンブリッジ大学で在外研究を実施したため、その機会を利用して、本研究課題に関する研究の動向やアプローチ、WTO紛争解決手続や投資家対国家紛争解決手続における対抗措置の抗弁の可能性、またICAO上訴事件ICJ判決などの重要判例の意義等について、現地の研究者と貴重な意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
WTO紛争解決手続や投資家対国家紛争解決手続については順調に研究を実施できた一方で、国際司法裁判所やその他の司法的紛争解決手続については必ずしも十分に研究が進んでおらず、研究計画に若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を実現すべく、今後も研究を実施するが、対ロシア制裁措置等の今日的な重要課題についても、適宜本研究の成果を公表していきたい。
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Causes of Carryover |
使用額が113円分受領額に満たなかったため、次年度の書籍等の物品費として支出する予定である。
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