2021 Fiscal Year Research-status Report
国際法上の犯罪に対する防止義務:国家責任と個人責任の二重追及に関する国際法の研究
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21K01160
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
竹村 仁美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10509904)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際刑事法 / 国際犯罪 / 防止義務 / 国際法上の個人責任 / 国家責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「国際法上の犯罪に対する防止義務:国家責任と個人責任の二重追及に関する国際法の研究」の目的は、ジェノサイドなどの国際社会の関心事である重大な国際法上の犯罪を防止する国家と個人の義務の射程を明確化することにより、国家責任と個人責任の二重追及に関する現代国際法の状況を明らかにすることにある。
具体的な研究項目は、①国際法上の犯罪に対する国家の防止義務、②国際法上の犯罪に対する個人の防止義務、③国際法上の犯罪の防止義務違反に対する国家責任、④国際法上の犯罪の防止義務違反に対する個人責任、⑤国際法上の犯罪に対する国家と個人の二重責任追及の国際法状況の分析の5つである。このうち、2021年度は①と②の文献収集と読解を中心に進め、同時に英文での研究業績に反映させるべく英文での執筆作業に主な時間を費やした。特に2021年度には、研究項目②の国際法上の犯罪に対する個人の防止義務について『国際刑法における上官責任とその国内法化』、『国際犯罪の指導者処罰: 国際刑事裁判所の理論と実践を中心に』など貴重な邦語文献の先行研究が出版されたため、この研究項目の日本での研究の進化に触れ、本研究課題にとって非常に有益であった。
2021年9月9日には第1回科研費研究会を遠隔開催し、第1報告者に元・国際刑事裁判所裁判官の尾﨑久仁子中央大学特任教授を迎え、第2報告者に指導者責任に関する研究を2021年に公表した木原正樹神戸学院大学教授を迎えてそれぞれご報告頂いた。他方で、2021年度は研究計画上、資料収集・読解の時期に当たり、課題に対する対外的業績発表は必ずしも芳しくなかった。予定していた海外での聞取り調査もかなわなかった。ただし、研究開始当初予定していたオランダ・ハーグにある平和宮図書館での文献収集に関しては、平和宮図書館の電子図書館利用を遠隔申請することが可能となり、これを利用することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は研究の基礎となる資料収集、裁判例の把握、それらの読解、そして英文での研究成果の執筆に努め、必要な資料収集、図書の購入等を計画通りに進めることができた。加えて、第1回科研費研究会を遠隔ながらも2021年度中に予定通り開催し、9月に2名の研究者を招いてご報告を頂き、そこに参加者として国際人道法、国際人権法、国際刑事法の研究者を中心に4名の大学教員と2名のポスドクを迎えて、計9名で科研費研究会を実施した。
その一方で、海外渡航、聞取り調査、国内外での出張を通じた対面式での研究報告・意見交換などは実施することができず、当初予定と比べて活動が制限的になった側面もある。ただし、一定の行動制約の中でも、資料収集、研究成果を出す努力は怠らなかった。電子図書館の利用、大学図書館の文献複写制度、相互貸借制度の利用によって行動制限の中でも順調に研究を進めることができた。
反省点として、研究成果物の執筆と発表について思うような進捗が得られていないけれども、2022年度は資料や研究会を通じて得た知識を糧に一層研究を進め、研究成果を口頭発表できるよう研究に励む所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の2年目となる2022年度には、研究項目⑤国際法上の犯罪に対する国家と個人の義務と責任の二重性の規範構造についての資料収集を行いつつ、研究会において日本語での研究報告の機会を得て、研究者と意見交換をしながら研究の方向性を確定していきたい。また、2021年度中に書き終えることができなかった英文業績を仕上げ、着実に研究成果を出すよう努める。
国家責任と個人責任の二重追及については、研究開始当初、国際司法裁判所と国際刑事裁判所の初の同時係属事案としてバングラデシュ/ミャンマーの事態に着眼していたけれども、2022年度にはウクライナの事態についても二重追及が見られることとなったため、これらの事例と先行研究を照らし合わせながら研究を深めていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、国内・海外出張がかなわなかったこと、遠隔で平和宮図書館電子図書を利用することができたことから、購入予定であった一部資料の代金が不要になる等したことが挙げられる。加えて、年度末に購入しようとしていた洋書の刊行遅延が理由に挙げられる。
次年度は、より計画的且つ適正な予算の執行に努める。
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