2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01161
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和仁 健太郎 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (40451851)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 戦後補償 / 戦後賠償 / 個人請求権 / 平和条約 / サンフランシスコ平和条約 / 日韓請求権協定 / 日華平和条約 / 日中共同声明 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で明らかにしようとするのは、国家がもつ個人請求権処理権能の根拠とその内在的および外在的制約である。戦後賠償問題については、個別の条約の解釈 論を中心として豊富な先行研究の蓄積があるが、個人請求権を処理する国家の「権能」の問題は、これまで断片的にしか論じられてこなかった。この問題の解明 は、過去に締結された戦後処理関連条約等について解釈上生ずる諸問題の解決や、今後締結される条約において国家が何をどこまで処理できるかを明らかにしておくという実践的な意義を有するほか、国際法の基礎理論に対して新たな視座や知見を提供するという意義も有する。本研究では、個人の請求権を国内法に基づ くものと国際法に基づくものとに分け、それらを処理する国家の権能の根拠と内在的制約、そして、その権能を外在的に制約するものがあるかどうかについて検 討する。 本研究では、個人の請求権を、(1)国内法(民法、国家賠償法等)に基づくものと、(2)国際法に基づくものとに分け、それぞれについて 、国家がそれら を処理できる根拠と処理権能の制約を明らかにする。(1)については、個人の私法上の権利(財産権その他の権利)を創設・ 改廃する権限を国際法上もつのはどの国かという問題を、(2)については、個人が国際法に基づき請求権をもつということの意味を検討する。(3)さらに、個人請求権を処理する国家の権能を外在的に制約し得るものとして、国際法の強行規範、1949年ジュネーヴ諸条約の共通規定、 国際人権法などと請求権処理権能の関係を検討する。 令和4年度は、(1)についての研究成果を論文にまとめ公刊した。また、日中間の戦争請求権処理問題について学会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度中に発表した論文、和仁健太郎「国家による個人請求権の処理権能:戦後補償の理論問題」『国際法外交雑誌』121巻2号(2023年)1-24頁は、本研究課題の中核的内容をなす論文であり、この論文を研究課題実施2年目に公刊できたことに鑑みると、研究は「当初の計画以上に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」欄に書いた整理に即して言えば、2023年度は(3)(請求権処理権能の外在的制約)についての研究を進める。それと同時に、2022年度に学会報告を行った日中間の戦争請求権処理問題に関する研究成果を論文にまとめる作業を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(3,357円)を有効に使える使途がなかったため、次年度予算と併せてより有効に使用すべきだと判断したため。
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Research Products
(2 results)