2021 Fiscal Year Research-status Report
渉外的な保全命令手続及び仲裁手続における外国法の調査・適用
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21K01162
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中野 俊一郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30180326)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際仲裁 / 国際私法 / 国際民事手続法 / 外国法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国際仲裁における外国法の調査・適用のあり方を、強行法規の適用に焦点を当てて研究した。大きな問題であり、20年以上前から少しずつ検討を加えてきたものであるが、今年度、ようやく二つの形で一定の成果につなげることができた。一つは、仲裁手続における準拠法の調査・適用にあたり、仲裁廷は、裁判所と異なり、当事者によるイニシアチブに委ねることを原則としながら、これに拘束されず、職権で外国法を調査・適用しうる、との考え方(ハイブリッド・アプローチ、又は権限としてのjura novit curia原則)が、各国の仲裁実務や仲裁学説において確立しつつあることを明らかにできたことである。これについては、2022年度に公刊される本間靖規先生古稀記念論文集に論文を寄稿し、現在、校正待ちの段階にある。いま一つは、仲裁廷での第三国(準拠法所属国以外の国)強行法規の適用について、諸外国の判例・学説を検討し、仲裁地を連結点とした扱いが有力化していることを明らかにできたことである。これについては、2021年11月の国際商取引学会全国大会において報告を行い、2922年度に公刊される同学会の年報に論文を寄稿した。これについては既に査読を通過し、現在、校正待ちの段階にある。さらに、このテーマに関しては、仲裁廷でEU強行法規の適用が争われた事例につき、東京高裁が平成28年8月19日に下した仲裁判断取消(否定)事例を素材として、仲裁廷における(準拠法に属しない)強行法規適用の具体的方法について検討を行い、仲裁ADR法学会の学会誌に論文を寄稿した(目下、校正作業中)。以上のほか、外国強行法規の適用が国際専属管轄合意の効力に及ぼす影響、並びに、米国で下された懲罰賠償判決の効力の日本での扱いに関して判例研究を行い、それぞれ2022年度の私法判例リマークス、民商法雑誌で公表の予定である(いずれも校正作業中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、2021年度に実施した研究の成果は、2022年度に多く公表される予定である。その点では研究の進展は非常に順調であったといえるが、コロナ禍により渡航が制限され、海外での現地調査や資料収集が実施できなかった点は、やや悔やまれるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、2021年度の研究の進捗状況は良好であったことから、残余の研究期間においては、これまでの成果を、国際私法・国際民事手続法・仲裁法の3分野を横断する形で取りまとめ、研究書として公表することを計画しているが、その成否はなお不透明である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による渡航制限により、海外調査出張を実施できなかったため。
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