2021 Fiscal Year Research-status Report
国際人権条約における法実現メカニズムの構造と実効性
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21K01170
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
前田 直子 京都女子大学, 法学部, 教授 (80353514)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際人権条約 / 拷問等禁止条約 / 国連 / 国家報告 / 個人通報 / 国家間通報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、国際人権条約の履行確保システムを構成する諸制度・手続の態様と、各条約が保障する権利規範はどのような連関を有しているのか、国連人権諸条約において、国家の一般的制度やその是正を目的とする国家報告制度と(議定書や選択条項の受諾による)個人の主観的人権侵害への救済を目的とする個人通報制度は共通項として備えられているが、特定の条約に設置された実地の調査・訪問手続は、当該条約のいかなる権利性に由来するものか、という問題意識を出発点とする。 令和3(2021)年度は、本研究課題の基盤的知識に関する研究を開始した。本研究課題は、最終的には、拷問等禁止条約等の下での実地調査手続(inquiry procedure)のプロセス(調査対象国の決定基準、調査員の選定方法、調査内容の確定等)とその手続の態様について、条約関連規定やその趣旨・目的に適っているものか、また正統性や実効性が条約上の国家義務や責任法の観点から確保されているのかを検討することを予定している。
しかしその前提として、拷問等禁止条約の他の手続(国家報告、個人通報、国家間通報)についても正確に把握すべきことから、これまで日本において先行研究が存在しない国家間通報手続について、その手続規定、手続の法的性格、運用上の課題などを中心に検証した。その作業の中で、拷問等禁止条約の国家間通報手続に固有の問題点が明らかになったところ、論稿を執筆した(令和4(2022)年度前半に刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行にあたり、拷問等禁止条約の他の手続(国家報告、個人通報、国家間通報)についても正確に把握すべきことから、これまで日本において先行研究が存在しない国家間通報手続について、その手続規定、手続の法的性格、運用上の課題などを中心に検証した。その作業の中で、拷問等禁止条約の国家間通報手続に固有の問題点が明らかになったところ、論稿を執筆した。(令和4(2022)年度前半に刊行予定。)
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主たる対象である、実地の訪問調査手続を備える条約(拷問等禁止条約・同選択議定書や強制失踪条約等)の起草過程を国連文書等から紐解き、手続の趣旨・目的とともに、当該条約で保障される権利の射程・性質との連関を分析する。 また、地域的拷問禁止の条約を有するヨーロッパの制度・手続や、拷問等禁止条約選択議 定書等自らの設置根拠ではない他の国際条約への解釈権を自認する米州人権委員会の法理に ついても、比較的視点から検証の対象とする。 起草作業に関連する文書・資料、国連やヨーロッパにおける実行状況については、関連機 関のウェブサイトからも一定程度は確認可能であると見込まれるが、現地でしか入手できないものの資料収を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、研究計画上予定していた東京等への国内研究会や現地調査(スイス・ジュネーブ等)に関する旅費の執行が不能となった。 また同様に、国際航空便の減便にて洋書の輸入にも時間を要することから、年度内に入手が確実ではない資料などの購入を、次年度(令和4(2022)年度)に先送りすることとした。以上の理由から一定の金額を繰越し、次年度使用額が生じることとなった。
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