2021 Fiscal Year Research-status Report
戦争の脱領域化/個別化への対応としての国際人道法の機能主義的再構成に関する研究
Project/Area Number |
21K01171
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
新井 京 同志社大学, 法学部, 教授 (10319436)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ハイブリッド戦争 / プロクシによる占領 / ウクライナ / ロシア / ナゴルノ・カラバフ / クリミア |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる「新しい戦争」の実像を理論的に整理することを2021年度の研究目標に定めた。 第1に行ったのは、一部の軍事大国が採っているいわゆるハイブリッド戦争の実態把握である。戦争がハイブリッドであるとは、「伝統的な軍事的手段とより洗練された秘密作戦の組みあわせ」による戦争であり、「政治的目的を達成するために、伝統的兵器、非正規的戦術、テロリズムおよび犯罪行為の融合を戦場において、同時的にかつ協調のとれた形で実施する」状況を言う。このような戦闘方法は、現在の政治的、軍事的、技術的、社会的なコンテクスト、例えばグローバル化した経済、瞬時に情報が駆け巡る環境、特に西側先進国の損害を与えられることや軍事作戦そのものに対する「忌避」を前提にして、「国家」が、そのような「脆弱性」を利用するという問題点がある。ハイブリッド戦争が国際法に及ぼす最も深刻な影響は、伝統的な戦争と平和の境界線を曖昧化し、かかる事態の二分法を前提にした国際法の基盤を突き崩すことだと考えられる。典型的な事象は2014年にロシアがウクライナに対して行ったクリミア半島・ドンバス地域への介入である。2022年2月以降は、ロシア・ウクライナ間においてより古典的な「ハイブリッドではない」国家間紛争が現実化した。しかし2022年春の時点でのロシアの「苦戦」に鑑みると、この現象は、より「上手くいった」ハイブリッド戦争への回帰・揺り戻しがあると考えられる。 第2に行ったのは、「新しい」形態というよりは「古典的」戦略であるが、プロクシによる占領、合意による占領の事例も振り返った。これにより、武力紛争法に基づく占領概念の他の事態との連続性の実相を検証することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報収集のための海外出張に制限があったため、ネット上での公開資料や国内での情報収集で代替させたが、大部分の資料は入手することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
順次海外出張が再開できると予想されるので、2021年度に不足があった部分について、事後的に補完していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により海外出張が出来なかったため。状況を見ながら2022年度または2023年度に改めて出張を計画したい。
|