2022 Fiscal Year Research-status Report
International Legal Order concerning the Economic Sanctions
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21K01173
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
石井 由梨佳 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 准教授 (80582890)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 経済制裁 / 国際人権法 / 安全保障 / 経済安全保障 / 国際公法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は国際社会における規範の非階層性を踏まえて、国家が独自に行う経済制裁に関する国際法規則の内実と外延を、理論的、かつ実証的に明らかにすることを目的とする。 経済制裁は自国の外交政策を遂行するために柔軟な方法で実施される一方、安全保障に関わることであるために隣接する法領域では規律の例外とされることが多かった。しかし近年では経済関係の緊密化、複層化に伴い、隣接する法領域における法抵触が国際紛争を惹起している。このうち、標的制裁と人権保障との関係は2000年代末から重要な問題として議論されてきた。すなわち、標的制裁は対象となる私人の財産権や移動の自由などを著しく制約するのにも関わらず、刑事手続とは異なり措置決定のプロセスが開示されておらず、司法救済を受ける権利も制約されている。 今後、経済制裁を規律する国際法規範は、隣接する法領域と相互補完的に結び付く形で発展していくことが見込まれる。人権法との関係では、第1に、当該制裁において、いかなる基準で私人の権利保障がなされるべきかを明らかにする必要がある。第2に、標的制裁は字義通り私人を対象に実施されるものであるが、それが国家に対して実施されてきた経済制裁と質的にいかなる異同を持つのかを検討しなくてはならない。 そこで、本研究は、(1) 経済制裁と隣接する法領域との関係を理論的に基礎づけた上で、(2) 規範の非階層性(ヘテラルキー)の基盤を踏まえて、規則の内実と外延、時間的、地理的適用範囲を明らかにすることを狙いにする。そのために、これまでの経済制裁の実証研究で十分に解明されてこなかった、経済制裁を規律する国際法と他領域との相互作用を中心的に分析することによって、グローバル化した国際社会における経済制裁の理論的基礎を提供することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2年目であるが、経済制裁に関して各国法令の制定過程、その趣旨目的、制定を主導した国内の政治動態や社会的背景、制定後の運用過程、実施のメカニズム等を、一次資料と二次資料を中心にして調査することができた。また、経済産業研究所「現代国際通商・投資システムの総合的研究」(第V期)デジタル貿易の多国間ルール形成プロジェクトにおいて、経済制裁と通商法や投資法の関連について、包括的な検討を行う機会を得た。さらに、研究計画の段階では想定していなかったが、ロシア=ウクライナ間の全面戦争の開始を受けて、米国や欧州連合等が行ったロシアや関連諸国に対する経済制裁についても、逐次フォローした。2023年3月には、アメリカ国際法学会において「インド太平洋における地経学」に関するパネルに登壇し、国際法がこのテーマに関して果たす役割と、同地域における経済安全保障の意義に関して報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
実証研究と並行して、経済制裁に関する基礎理論や隣接領域の法理論も検証する。特に、友好条約、通商・投資協定等の諸条約における安全保障例外の意義に関して、検討を行う。その対象としては、2023年3月30日・国際司法裁判所・Certain Iranian Assets (Islamic Republic of Iran v. United States of America)の検討も視野に入れている。また、国内法制について調べた前年度の調査結果を踏まえて、精緻な事例研究を行う。 また令和5年度は、それまでの研究成果を総括し、公刊するための論文執筆に当てる予定である。また、各種の研究会やワークショップ、学会などにおいて、本研究の成果を公表していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度が最終年度であるので、国外出張旅費を含め、必要な経費を留保している。
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