2021 Fiscal Year Research-status Report
商品デザインが競争者を排除する場合の競争法規制のあり方
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21K01180
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 邦宣 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00305674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | デジタルプラットフォーム / 競争者排除行為 / 商品デザイン / バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
検索エンジンにおける検索結果の表示方法や、オンラインショッピングサイトにおける商品の提示方法が、消費者の意思決定に大きな影響を与えると指摘されている。このような仕様やデザインについては、一方で、大量の情報の中で消費者の選択を助けるものであり、望ましいイノベーションであるとの積極的な評価がある。しかし他方、それらが消費者のバイアスや誤解を利用して自己優遇するものであり、不当に競争者を排除しているとの消極的な評価もある。いかなる基準で両者を区別するのか。また消極的に評価すべき場合に、どのような基準によって競争法の規制を及ぼすべきか。本研究は、商品の仕様やデザインに対する競争法による規制のあり方を、米国法およびEU法を比較法対象として、明らかにするものである。 2021年度は、学会報告において、特に検索エンジンについて、欧州のアンドロイド事件、グーグルショッピング事件、米国のグーグルショッピング事件(不問)を取り上げて、上記問題の全体像を示した。デザインが有する消費者選択の誘導効果、意思歪曲効果を競争者排除効果の前提として評価した欧州と、それを検討しなかった米国との対比を前提として、デジタルプラットフォームにおける競争者排除行為において、ユーザーバイアスの評価が重要であることを示した。 具体的に、EU委員会によれば、グーグルショッピング事件について、9割以上のユーザーは検索結果の2ページ以下を見ることがない。デザイン等をイノベーションと評価する者によれば、これらは、消費者が商品を効率的に購入していることの現れと考えられる。しかし、EU委員会、またデザイン等を競争法上消極的に評価する者によれば、目立つものをクリックする(セイリエンシーバイアス)、示されたものをクリックする(デフォルトバイアス)などのバイアスを利用して、消費者の商品選択を誘導していることの現れと考えられることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記学会報告において、問題の全体像を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
競争法による事後規制のみならず、事前規制のあり方について、欧州にてデジタル市場法が成立し、また我が国でもモバイルOSについて事前規制のあり方が議論されているところであり、それらについても研究対象としたい。
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