2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01188
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 信太郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (50243746)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死因究明 / 死因認定 / 法医学 / 法医鑑定 / 検視制度 / 検死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、殺人事件、傷害致死事件、虐待事案など、刑事裁判において死因の認定が争点となる事件を素材として、犯罪死と自然死の評価の誤りによって生じる誤判・冤罪事例の分析を行ない、そのような誤判・冤罪を回避する方策(死因に対する事実認定の適正化)を提示することを目的としている。犯罪捜査の結果、それが自然死であると判断されたものの、後にそれが犯罪死だったのではないかとの嫌疑が生じても、各証拠群、特に死体が焼却された後では、刑事事件として立件することは極めて困難となる。逆に被害者が事故死、病死など犯罪以外の理由で死亡したのに、これを無理に犯罪死と判定すると無実の者を処罰する危険を生じさせる。本研究では、そうした死因を巡る事実認定の誤りを回避するために、どのような手立てが必要かを検討する。 上記の目的意識の下で、本年度は、我が国の実情を知るために、死因究明に関する基礎的文献の収集と分析の作業に充てた。特に、令和2年4月1日に施行された「死因究明等推進基本法」を踏まえ、死因が争点となった刑事裁判を収集して、現在、検討作業を行っている。令和3年6月には、政府において、「死因究明等推進計画」が閣議決定されており、一連の動向を把握した。また、正確な死因認定のための方策を検討するには、比較法の観点から分析することが有用であるため、ドイツの検視制度や死因認定に関する基礎的文献の収集と分析を現在、行なっている段階である。日独の死因究明に対する法制度の内容と、現状の把握及び死因究明制度の問題点の洗い出しなどの作業を引き続き行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は令和3年から開始したが、同年度は主として、関連の基礎文献および素材判例の収集と、それらの分析・整理に充当した。基礎的文献の収集については概ね順調だが、法医学者に対する面談調査については、北海道大学大学院医学研究院の関係者と情報交換を行なえた程度で、道警や検察庁などの捜査機関(警察、検察)、弁護士会、他大学の法医学関係者への面談は、コロナ禍の影響が大きく、ほとんど実施できていない。さらに、ドイツへの海外出張は、新型コロナ感染状況(感染者数)が日本よりも深刻な状況が続いているため、予備調査も含めてまったく実施できなかった。 国内・国外の出張に関しては、コロナ禍の状況を睨みつつの計画遂行となるが、引き続き、解明されていない諸課題の検討を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ法の分析については、実態調査ができなかったこともあり、遅れが生じているので、引き続き、文献の収集とその翻訳を行って、制度の実情把握にできる限り努めながら、渡独の準備を進めたい。死因究明制度の実情を把握するのに、関係者への面談や施設見学などをはじめとする現地調査は有益であり、情報収集のために極力遂行したい。但し、新型コロナ感染状況が一向に終息せず、海外出張の実施が困難だと判断した場合には、リモートでの面談など別の手立てを講じることも考えられる。 また、日本の制度分析については、北大法医学教室の教員に対する面談や、施設見学は容易であるが、他の関係機関、大学などにはまだ現地調査などができていないので、これについても、コロナ禍の状況を睨みながら、遂行していきたい。したがって、現段階では、研究計画の変更等は考えていない。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、令和2年から続く、新型コロナ感染状況の影響が最大の要因である。現在、北海道大学以外、国内外に対する本格的な実態調査を行える状況にないため、ほとんど出張旅費を支出できない状態である。また、一定程度、緩和されたとはいえ、日本政府及び勤務校である北海道大学から、海外出張自粛要請が出され、また、渡航予定先のドイツは、入国制限政策(ワクチン接種証明書の提示義務)を引き続き行っていることもあり、出張旅費に残額が生じ、持ち越しの研究費が発生した。 令和4年度は、新型コロナ感染状況を睨みながらの研究計画遂行になるが、従来どおり、基礎的文献の収集と分析を行ないつつ、国内外の実態調査を実施する。特に国内調査については、北海道内はもとより、その他の地域において、裁判官、検察官などを対象に面接を行いたい。これと合わせて、コロナ禍でも文献収集やインターネットを通じての情報獲得はできるので、設備備品、書籍費等と国内外出張費とを合わせ、残額分と今年度分の経費を執行していく。
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Research Products
(1 results)