2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of Justification Principles for the Application of Criminal Law to International Crime
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21K01190
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡辺 卓也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (90350454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 刑法の適用 / 罪刑法定主義 / 双方可罰性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第1段階として、2021年度前半は、既に着手していた、国内刑法の適用について検討した。具体的には、国内刑法の域外適用に関するこれまでの議論を確認したうえで、罪刑法定主義と刑法の適用に関する諸原則との関係を検討した。その概要については、「刑法の域外適用と罪刑法定主義」『公法・人権理論の再構成 後藤光男先生古稀祝賀』として公刊された。 検討の結果、罪刑法定主義の2つの要請、すなわち、民主主義的要請及び自由主義的要請のいずれとの関係においても、刑法の域外適用を理論的に正当化することは困難であることが明らかとなった。それゆえ、立法論的に、この問題を解決しうる方策が必要となる。そこで、双方可罰性の原則の導入について検討すべきである。 もっとも、民主主義的要請に基づく法律主義が憲法上の要請であるとすれば(憲法31条)、このような解決が当該要請に抵触しないかを慎重に検討する必要がある。例えば、法律主義の例外として、適用される処罰規定の内容が犯罪地国に委ねられたと構成することが考えられるが、その場合には、憲法上の他の例外規定、すなわち、「特に法律に委任がある場合」に政令に罰則を定め得るとする規定(73条6号但書)や「法律の範囲内」で条例に罰則を定め得るとする規定(94条)を参考に、その根拠が模索されるべきである。 以上のような問題意識から、2021年度後半は、これらの例外規定の正当化根拠を探究し、双方可罰性の原則の導入にあたってその成果を援用し得るかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、本研究の第1段階である国内刑法の適用についての検討を概ね1年半程度で終える予定であった。具体的には、罪刑法定主義の民主主義的要請のみならず、自由主義的要請ないし責任主義との関係をも含めた国内刑法の正当化原理につき検討し、一定の結論を示すことを予定していた。 しかし、新型コロナウィルス感染症の拡大傾向に歯止めがかからず、学会や研究会等の中止や延期が相次いだこと、また、それらがオンライン開催に変更になったことから、他の研究者との対面での意見交換が出来なくなった。そのため、もっぱら単独での資料収集とその分析に終始することで新たな着想を得る機会が乏しく、研究が深まらなかった。 以上から、当初の研究計画と比べて、本研究の進捗は「やや遅れている」。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第1段階を早期に終えるため、2022年度は、国内刑法の適用についての検討を行い、年度内に一定の結論を得ることとする。今後は、学会や研究会等の対面開催が増えることが見込まれることから、これらに積極的に参加し、他の研究者との意見交換を通じて新たな着想を得る機会とし、それを論文執筆に繋げたい。 「研究実績の概要」でも示したように、2021年度後半から継続している内容として、まず、双方可罰性の原則の導入が、憲法上の要請である法律主義に抵触しないかを検討し、罪刑法定主義の民主主義的要請との関係で、立法論的方策の妥当性を検討する。次に、双方可罰性の原則の導入が、国内刑法に違反した外国人が違法性の意識を持ち得ることを担保し得るかを検討し、罪刑法定主義の自由主義的要請ないし責任主義との関係で、立法論的方策の妥当性を検討する。このうち前者については、年度内における研究成果の公刊を目指し、後者についても、年度内に論文執筆を終えることとしたい。
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Research Products
(1 results)