2021 Fiscal Year Research-status Report
同意に基づかない撮影行為等の処罰及び撮影データの没収・消去に関する研究
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21K01191
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋爪 隆 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70251436)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 刑法 / 刑事法 / 性犯罪 / 盗撮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①同意に基づかない撮影行為及び撮影データの拡散にかかる行為の処罰に関する研究、②撮影データ及び複製物の没収・消去の手法に関する研究に基づき、盗撮行為等による被害を有効に防止できる刑事法制について、理論的・立法論的検討を加えるものである。前者①は、現在、同意なく他人を撮影する行為について法律レベルでは処罰規定が設けられていない点にかんがみ、外国法の状況を参照しつつ、立法論的な提言を目指すものである。また、後者②は、データやその複製物の没収・消去の在り方について、現行法の没収規定で対応可能な範囲を明らかにした上で、付加刑としての没収の対象物件の拡張、さらに有罪判決を前提としない剥奪処分の可能性について理論的な検討を加えようとするものである。 初年度(2021年度)の研究においては、まずは前者①の研究に重点を置き、盗撮罪に関するドイツ語圏の立法例について検討を加えるとともに、かりに新たな立法を行うとした場合、どのような行為を処罰すべきかについて、理論的な検討を加えた。研究代表者が法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会に参加し、この問題に関する議論をする機会に恵まれたこともあり、たとえばアスリートの競技中の姿態を性的に強調して撮影し、これを公開する行為の可罰性については、少なくとも通常の撮影が許容されている状況下においては、性的に強調する撮影行為を明確に区別しつつ、これを処罰対象にすることは困難ではないかとの知見を得るに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響などで、国内外の出張が困難であり、研究者・実務家との意見交換の機会は必ずしも十分ではないが、立法に関する議論が進展したこともあり、盗撮行為の可罰性や処罰の在り方について、おおむね順調に議論を進めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に述べたとおり、本研究は、①同意に基づかない撮影行為及び撮影データの拡散にかかる行為の処罰に関する研究、②撮影データ及び複製物の没収・消去の手法に関する研究に基づき、盗撮行為等による被害を有効に防止できる刑事法制について、理論的・立法論的検討を加えるものである。次年度においては、①の研究をさらに継続するとともに、②の研究について、まずは現行法の没収・追徴に関する法制度の全体像を把握しつつ、いかなる立法上の課題があるかについて、理論的な検討を進めることにしたい。 新型コロナウイルス感染症の影響がなお十分には見通すことができない状況ではあるが、基本的には研究計画の変更を要しないと考えている。
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Causes of Carryover |
国内出張などの予定が延期になったこと、また、購入予定の国内外の関連文献の公刊時期が遅れたことから、次年度使用額が生じている。これらについては、次年度に繰り越した上で、研究計画は実質的に変更することなく、執行する予定である。
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