2022 Fiscal Year Research-status Report
Thory of Attorney-Client Privilege
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21K01195
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
丸橋 昌太郎 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (60402096)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 弁護士依頼者間秘匿特権 / セレクティブウェーバー / 社内文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、英米における秘匿特権の基本的な位置付けおよび秘匿対象物、秘匿性要件の分析を行った。両国は、周知の通り、同じ英米法と位置付けられながら、セレクティブウェーバーを認めるイギリスと、これを認めないアメリカに加えて、秘匿対象は、基本的に、弁護士の法的助言に限られるが、その範囲は、とりわけ社内の既存文書において取り扱いが異なる。これらの違いの要因の分析を事例研究により行った。 アメリカ法では、秘匿特権を「司法行政の遵守という点においてより広範な公共の利益を促進すること」(Upjohn Co. v. United States, 449 U.S. 383 (1981))と位置付け、イギリス法では、秘匿特権を「司法作用全体にとって基盤となる基本条件」(R v. Derby Magistrates’ Court, ex p B [1996] 1 AC 487 (HL) )と位置付けている。これは一見すると同じようにみえるが、司法遵守の促進と、司法作用全体の基盤という違いが、セレクティブウェーバーや秘匿対象物(とりわけ社内文書の取り扱い)に違いを生ぜしめていることがわかった。 もっとも具現化は異なるものの、いずれも依頼者が弁護士に、率直に、すべてを打ち明けられるように設計されている点は間違いないところである。これが法令遵守を目指すのか、司法作用の基盤形成を目指すのかで、具現化に微妙な差異をもたらしているものと考えられる。 本年度は、新型コロナウイルスの影響で、海外出張に制約があったため、各国の実務家たちとディスカッションを行うことができなかった。来年度にまとめて行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外出張が制限されているため、実務家のインタビュー等ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、海外出張して、実務家のインタビューを、前年度の内容も含めて実施する。
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Causes of Carryover |
海外渡航が2年連続でできなかったため、それにともなう物件費、出張費を次年度執行するものとする。 計画としては、滞在日数を増やすか、主張回数を増やすなどして、前年度までのヒアリングをカバーしつつ、今年度のヒアリングを実施する。
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Research Products
(2 results)