2021 Fiscal Year Research-status Report
性犯罪規定改正後に想定される実務上の諸問題に関する理論的研究
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21K01209
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
嘉門 優 立命館大学, 法学部, 教授 (40407169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 司 龍谷大学, 法学部, 教授 (20432784)
山下 裕樹 神戸学院大学, 法学部, 講師 (20817150)
玄 守道 龍谷大学, 法学部, 教授 (60460721)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 被害者の同意 / 抗拒不能 / 欺罔 / 不同意性交罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
性犯罪改正について現在、法制審議会で議論中であるが、本研究では改正後に予測されうる実際上の問題に目を向けて、各問題に精通した専門家による検討を行うことにより、実務に対して知見を提供することを目的とする。とくに、法改正後に予測される問題解決に先んじて目を向けて、実務に有用な知見の提供を目指している。 本年度は、法改正論議を念頭に置いて、これまで実施してきた性犯罪改正をめぐる議論状況の整理に関する論考を公表した。また、準強制性交等罪における抗拒不能概念や、故意の認定に関する実務における問題状況を把握するため、弁護士による報告を受けた。さらに、被害者の同意論をめぐる最新の議論状況について報告を受けるため、専門家の講演会を実施した。それ以外にも、メンバー同士で密に意見交換や勉強会を行い、性犯罪改正動向を踏まえて調査研究を進めている。 また、研究分担者により、ストーカー規制をめぐる論考や報告もなされ、より広い視点で、性犯罪についての研究も進めた。 最近では、法的な視点だけではなく、より広い視野を踏まえた研究をするために、心理学から性的同意に対してアプローチを行っているグループとの意見交換を行った。また、「性暴力犯罪と性教育」と題した公開研究会を実施し、法学以外の専門家の知見や一般市民の意見も得ることができた。そのほか、マスコミ対応も積極的に行い、性的同意年齢や、抗拒不能の認定に関する問題点について、一般市民向けの解説を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、まずはこれまで実施してきた性犯罪改正をめぐる議論状況の整理を行ったことで、論点はかなり明らかになってきた。本研究課題との関係では、改正後を見据えて実務上問われる点を明らかにすることが必要であることから、計画通り、準強制性交等罪における抗拒不能概念における問題状況を把握するため、弁護士に報告をお願いした。その際の質疑応答では、参加者から示唆に富む多くの意見が示され、次年度以降の研究の方向性がまとまった。実務的な観点だけではなく、理論的な観点からも、特に、被害者の同意論をめぐる最新の議論状況について専門家による報告を受け、性犯罪における被害者の同意論のあり方について議論を行い、次の段階へ進むために準備中である。心理学的な見地から性的同意を検討するグループとの交流も進行中である。以上のように、おおむね順調に進展しているが、新型コロナウイルスの影響もあり、海外出張や海外からのゲスト招へいは控えている点だけが予定通り進んではいない。この点は次年度以降、対応することとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
実務的な問題については、引き続き実務家を招へいして報告を受けたり、インタビューをするなどして、問題状況の把握に努める。海外における状況についても調査予定である。さらに、理論的な観点から、性犯罪における故意や、被害者の同意の有無の判断などの議論が深められているとはいえない現状にある。性犯罪特有の問題を踏まえ、各論点について専門的な見地から、理論的な検討を行う予定である。これらの論点については、定期的に勉強会や研究会を行って研究内容を充実化させ、成果として論文の公表を目指す。 状況が落ち着けば、海外出張も行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの状況から海外出張を控えたことや、改正論議の進行を注視しつつ、慎重に研究を進めているため。次年度使用額については、主に、海外出張費や新たな議論に関する書籍の購入費として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)