2022 Fiscal Year Research-status Report
協同組合における員外取引についての基礎的研究:員外取引は異物か?
Project/Area Number |
21K01212
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 協同組合 / 協同組合法 / 非営利組織法 / 非営利法人法 / 農協 / 漁協 / 社会的経済 / 社会的連帯経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)わが国では消費生活協同組合による日常的な員外取引は許されていない。農業協同組合が行う信用事業を念頭に置いて――機能的に見ると本来的組合員ではない者との取引という点で員外取引と共通する――准組合員との取引を制限しようという強力な提言が近時なされた。このように員外取引(及びより広くその周辺部分の取引)について厳格な法規制をすることは正当化されるのかを考察するための参考にするため、ドイツにおける法規制について考察した。 この2種類の員外取引にかかる規制が厳しいという点は、ドイツにおける旧規制と共通する。このうち消費生活協同組合についての厳格な規制の趣旨は、協同組合の特質から当然に導き出されるものではなく、同業の自営業者に対する配慮という点で日独で共通していることを明らかにした。これに対して信用事業における規制(・規制強化という提言)の趣旨は、彼我で異なっている。わが国では本来的組合員である農業者組合員に対する事業を通じた奉仕を組合がなおざりにしていることを理由にして、同提言がなされた。これに対してドイツでは出資リスクを負っていない員外者に融資することを規制しようとしていたことを明らかにした。 ドイツにおける員外取引規制は1973年法改正で最終的に撤廃され、現在では定款自治に完全に委ねられている。わが国における員外取引規制のあり方についても一つの方向性として大いに参考になる。 (2)2021年度水産業協同組合法について考察し、その一環として員外取引規制を取り上げ、考察結果を口頭発表した。その内容をとりまとめた(下記〔雑誌論文〕欄の一つ目)。 (3)本研究課題の遂行に際しては、企業法の中心的地位を占める会社法をも参照しており、比較法の対象国も上記ドイツに限らず、韓国法も比較の視座に置いている。副次的ではあるが下記〔雑誌論文〕欄の二つ目・三つ目はその成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究遂行に必要な文献は海外のものも含めて収集したうえで、精読を続けている。しかし研究計画で予定していた関連団体へのヒアリングがコロナ禍の中で実施できなかった。 上記諸事情を考慮に入れて、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)過年度に予定していたにもかかわらずコロナ禍のため実施できなかった単位組合・2次組合・行政庁等に対するヒアリング調査を実施する。再び流行した際には書面等による非対面調査で代替する。 (2)員外取引とは員外者(非組合員)との取引である。しかし員外者との取引と一口にいっても色々な形態がある。それらすべてをここでいう員外取引と捉えて、規制の対象にしているのではないことは明らかである。例えば組合員が生産した農産物を農業協同組合がスーパーに売る場合には、スーパーは員外者であるが、組合とスーパーとの取引を員外取引とはいわない。これはわかりやすい事例であるが、組合がする種々の取引を考えてみると、員外取引と捉えるべきかどうか曖昧なものもある。員外取引規制のあり方を考える上で、規制の対象となる員外取引をできるだけ精緻に定義することを試みる。 員外取引の定義については、本研究課題で比較の視座に置いているドイツでは既に研究がなされている。その研究成果を参考にしながら取引を分類した上で、わが国で実際に行われているどのような取引が員外取引に該当するのかを考察する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは次の二つの理由による。一つは、2022年度に予定していた出張がコロナ禍のため遂行できなかったためである。もう一つは、2022年度に購入予定の図書の公刊が2023年度以降にずれ込んだためである。 繰り越した額は、2023年度に公刊予定の図書の購入費、研究遂行のための出張費、遠隔方式で行われる研究会に参加するために必要となる機材購入費等に充てる予定である。
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