2022 Fiscal Year Research-status Report
消費者の認知バイアスを利用した勧誘手法・契約構造に対する法的規制の検討
Project/Area Number |
21K01217
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
牧 佐智代 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40543517)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 情報商材 / 消費者裁判手続特例法 / 支配性要件 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、情報商材をめぐる消費者トラブルを素材として、(1)情報商材の販売において消費者の認知バイアスに働きかける勧誘手法とはいかなるものであるのか、(2)現行の法制度で用意されている救済手段の問題性を明らかにした。 (1)について、情報商材トラブルにおける問題の所在は、①情報商材という商品自体の特徴、②勧誘手法の特徴という二点にあることを明らかにした。すなわち、①情報商材は購入前にその商品(情報)に価値があるのか確かめることができず、購入して得た情報に従って試してみて初めて、勧誘言辞の通りに「儲けるノウハウ」・「必勝法」という価値がある情報なのか判明するという特徴がある。そして、②勧誘手法として、購入した情報が勧誘言辞とは異なり通り一遍のものであって「儲ける」・「勝つ」ことができないとの購入者からの苦情申し立てに対して、より確実に稼げるやり方・方法を教えると称して、「より高額」の情報商材を勧誘するという、いったん商品を購入した消費者をさらに搾取するという手法が構築されている。 (2)について、このような情報商材は、インターネット販売やSNSツールの普及に伴い、多数の消費者が同一商品を購入することが可能であるところ、多数の消費者の集団的被害回復を図る法制度として消費者裁判手続特例法が存在する。本研究では暗号資産に関する情報商材トラブルである、東京高判令和3年12月22日を素材として、同特例法における支配性要件の解釈・運用の問題を明らかにした。すなわち、過失相殺を理由とした支配性要件不充足による訴え却下は、実体法上は損害賠償義務の存否が確定した後の賠償額減額調整という後処理のレベルであるにも関わらず、本案審理に進めないために損害賠償義務の存否が判断されない、言い換えると同商法が不適法なものであるのか違法性判断がなされないままとなるという問題があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は英国の販売信用市場における法制度、2022年度は我が国における消費者裁判手続特例法を素材として、消費者の認知バイアスにつけこむ勧誘手法・消費者被害の具体例を考察すると共に、各国の法制度を検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
情報商材トラブルは、2017年頃から急激に増加しているところ、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、在宅ワークで稼げることを強調したり、SNSツールでの勧誘手法の構築ともあいまって、近年ますます増加傾向にある。このように、コロナ禍で拡大した消費者被害に着目して、どのような認知バイアスにつけこむ手法が構築されているのか検討を進める。
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