2022 Fiscal Year Research-status Report
事業者間契約における不当条項規制に関する近年のドイツ法の議論の比較法研究
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21K01220
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 直大 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 准教授 (80512970)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 約款 / ドイツ法 / 民法 / 事業者 / 規制緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、事業者間契約における約款規制の規制緩和論に関する2004年~2012年頃までのドイツ文献を読解し、主として通時的な整理を図ると共に、一定の分析を行った。以下、現時点で得られた分析成果を述べる。 まず、ドイツにおける上記議論の展開は、おおよそ2期に分けることができる。すなわち、2000年代においては、解釈論の形で約款規制の緩和が論じられていたが、2010年代になると、立法論が展開されるようになる。本年度の研究においては、解釈論期について主要な文献をほぼすべて渉猟したが、立法論期の研究は、中途に留まっている。 解釈論期については、この時期の主要な論客であるベルガー(Klaus Peter Berger)とフォン・ヴェストファーレン(Friedrich Graf von Westphalen)の見解を中心に、議論のまとめを行った。前者が、約款と個別合意を分かつ商議(Aushandeln)要件を緩やかに認定すべきこと、また、内容規制の基準について、消費者契約を対象とする不当条項カタログに事業者間契約における不当性徴憑作用を認めるべきでないことなどを主張したのに対し、後者は、約款規制の目的に照らして厳格な商議要件を支持し、また、不当条項カタログも任意規定を基礎とすることを指摘するなど、任意法を標準とした約款規制が事業者間契約でも妥当すべきことを主張した。 2010年以降の立法論期の議論からは、いくつか注目すべき点が明らかになった。1つには、約款規制の目的・正当化根拠について見解が一致していないことである。情報格差に根拠を求める説がある一方、約款法を補充的なカルテル法とみなす説も根強い。2つには、事業者の中にも規制緩和賛成派と反対派が存在したことである。 これまで得たこれらの知見をもとに、今後さらに研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、2004年~2020年頃までのドイツにおける事業者間契約における約款規制の規制緩和論を分析し、詳細な整理を行うことを目的としている。当初の計画によれば、2022年度までに大方の文献を読破し、論文の執筆に入る予定であった。しかしながら、研究開始から2年を経た現時点において、いくつかの大部な文献については比較的最近のものも読了しているものの、文献の網羅的な整理・分析については、2012年までしかできていない。その理由としては、1つには研究者本人の能力やリソースの問題があるが、もう1つには、文献の数量が当初想定していた以上に膨大であるということが挙げられる。 もっとも、文献整理に終わりが見えないわけではない。ドイツにおける20年弱に及ぶ議論には、いくつかの盛期があるが、現在滞在している2012年前後の時期は、その2つ目に当たる。この時期の文献を読み終えれば、残る資料は比較的少ない。 以上のことから、本研究課題の進捗状況は、「やや遅れている」ものと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の箇所で記したように、本研究課題の進行には遅れが生じている。最終年度において成果を上げるためには、まずもって単純にリソース配分を増やす必要がある。さらに、研究成果のまとめ方についても、一定の修正が必要となるだろう。従来の構想では、約款規制の目的論やその背景にある契約の基礎理論にも深く立ち入った形で研究をまとめることを考えていたが、そこまで進むのはほぼ不可能である。さしあたっては、ドイツにおける議論の通時的な整理をもとに、そこで浮上した主要な論点やその他注目すべき点を1つずつ取り上げていく形で、研究をまとめることを目指す。
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