2022 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ連邦洪水保険制度の歴史的・機能的・立法論的検討
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21K01222
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
嘉村 雄司 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (90581059)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカ連邦洪水保険制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年のアメリカの研究成果を参考にした上で、「アメリカ連邦洪水保険制度(以下「NFIP」)の歴史的・機能的・立法論的検討(現状・課題・展望の検討)」を行うことにより、水害保険のあるべき法的仕組みを探求することを目的とする。本研究の具体的な課題は、①NFIPの効果的な普及を妨げている法制度的要因(歴史的検討)、②保険料の設定や保険金の支払において連邦政府が果たしている役割(機能的検討)、③アメリカの保険法学説における制度論的な議論の内容(立法論的検討)であるが、令和4年度は主として②を対象とする。 すなわち、令和4年度は、計量経済学(実証研究)および行動経済学の知見を参照しつつ、保険料の設定や保険金の支払において連邦政府等が果たしている役割を明らかにすることを目的とする。連邦緊急事態管理庁は、保険料の上昇を抑え低所得者にも加入を促すために「金銭的助成(subsidiary)」を提供している。また、保険金支払額の上昇に備えるため、連邦政府が密接に関与することにより、「保険金支払の保証」を提供している。しかし、近年のアメリカの研究では、当該助成・保証がNFIPの理念・目的とはほど遠い役割しか果たせていないことを実証的に明らかにした上で、そのような結果に至る理由を行動経済学的に分析するものが現れている(たとえば、連邦政府の助成は、実際には低所得者ではなく高所得者にとって有利に機能していることが多く、それは低所得者の水害リスクに対する歪んだ評価という傾向から説明可能であるという)。以上のような実証研究・行動経済学の知見を参考にし、連邦政府等の役割の限界を示すことにより、NFIPの現状と課題の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した通り、アメリカ法の調査・検討が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、アメリカ連邦洪水保険制度に関して、アメリカの保険法学説における制度論的な議論の内容(立法論的検討)について検討する予定である。その際には、前年度と同様に、アメリカにおける議論を参考に検討を進めることとしたい。
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Causes of Carryover |
令和4年度において予定していたアメリカでの調査・資料収集について、CONVID-19の影響により、実施することができなかった。令和5年度は、繰越研究費を用いて、予定よりも長い期間、アメリカでの調査・資料収集を行う予定であ
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