2021 Fiscal Year Research-status Report
差止命令等の非金銭的裁判の国際裁判管轄および承認・執行の規律の再検討
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21K01232
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
的場 朝子 京都女子大学, 法学部, 准教授 (20403214)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 差止命令 / 外国判決の承認・執行 / 非金銭的裁判 / 保全命令 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究では、フランス・スイス・英国・米国・カナダ等の裁判所がかかわる「差止めを命じる外国判決等」として、「資産凍結命令のような外国保全命令」、「外国裁判所の発令した訴訟差止命令」、「知的財産権侵害や営業秘密の侵害の差止めを命じる外国判決」等の多様な裁判を取り上げ、判決国(発令国)以外の国で承認・執行しようとする場合に共通して障壁となり得る諸点を分析した。 コモン・ロー系の国々の法制と大陸法系の国々の法制との違い、特に、コモン・ロー系の法制において重要な役割を果たす裁判所侮辱の制度の存在に着目すると、大陸法系の国々には存在しないコモン・ロー系の裁判の効力を大陸法系諸国で認めること自体、公序に反する等と解する立場もあり得る。しかし、具体的事例を検討したところでは、「差止めを命じる外国判決等」自体の承認・執行の困難性は、「差止めを命じる外国判決等」の内容に多様性があり得ること、及び、その執行方法も法域ごとに多様性があること等から、「承認」段階においてよりも、むしろ「執行」の局面において現れている。また、EU規則(ブリュッセルIbis規則)で新たに加えられた「適応」に関する規定等からも、「執行」の困難性の存在を説明できる。 こうした海外の動向についての分析からは、日本法の解釈ないし立法論との関係でも、一定の示唆を汲みとれる。たとえば、一般に「外国保全命令」は、日本の民事訴訟法118条の解釈として、承認適格性を欠くと解されている。しかし、執行における「適応」が認められ得るのであれば、あらゆる外国保全命令の我が国における承認・執行を一概に否定する必要はない、との立場を採りやすくなるとも考え得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度中、本来であれば、1度は海外の研究者への聴き取り調査や海外の研究機関での資料収集等を行う予定であった。しかし、新型コロナ感染症のパンデミック化の影響で、海外に渡航することが困難となり、海外の研究者への聴き取り調査等を行うことができなかった。 しかし、集めた文献資料や裁判例の分析の結果として、いくつか今後特に検討すべき点(執行判決手続について、人格権侵害の救済について、等)を見つけることもできており、研究の方向性に迷いはない。
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Strategy for Future Research Activity |
海外の裁判例・文献等の資料収集を行うために、必要性の高いデータベース(所属大学において利用契約がなされていないもの)については、個別に利用契約を結ぶ。また、国内での学会や研究会での報告を通じて、他の研究者との意見交換を行うつもりである。 また、2022年度中に1度は、海外の研究者への聴き取り調査等を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度は、新型コロナ感染症のパンデミック化の影響で海外調査に出かけることが困難であったため、予定していた海外渡航費等の使用が不可能となった。2022年度は、海外調査等を行う予定であり、また、資料収集の便宜のために、新たにデータベース等の使用契約を結ぶつもりである。
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Research Products
(3 results)