2021 Fiscal Year Research-status Report
Introduction of Strict Liability for Domestic Air Transportation in Japan
Project/Area Number |
21K01235
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
小林 貴之 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (60834637)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 航空保険料 / 旅客の人身損害 / 運送人の一部無過失責任 / 乗客賠償責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、我が国の国内航空運送にも1999年モントリオール条約と同様に旅客の人身損害に対する128,821SDRまでの無過失責任を導入した場合の航空保険の料率の変化を予測することを調査の第一段階としている。本邦航空会社が購入する航空保険は、航空機の機体に対する物保険と賠償責任保険とに大別でき、賠償責任保険は①乗客賠償責任、②貨物賠償責任、③第三者賠償責任、④一般賠償責任に分かれている。旅客の人身損害に一部無過失責任を航空会社に課した場合に、この乗客賠償責任の保険料率に増加が生じる可能性が存在するからである。 我が国において旅客の人身損害に対する責任原則の大きな変更を行ったのは、1982年の国内線において賠償限度額を撤廃した事案と、1992年に国際線において賠償限度額を撤廃した事案である。1982年の国内線の賠償限度額の撤廃の際には、乗客賠償責任部分の保険料の追加支払いが英国ロイズ保険組合のアンダーライターより求められた。一方1992年の国際線の賠償限度額の撤廃の際には、特段追加的な保険料の支払いは求められてはいない。航空保険は12月1日が契約更改日となっており、国内線は契約期中において、国際線は契約更改日に合わせてアンダーライターとの条件交渉を行ったことが追加保険料の要否に影響を与えた可能性はある。しかしながら、1992年の国際線の賠償限度額の撤廃の際の航空保険引受市場は、1991年から続いた航空機事故率の上昇により、保険を引受ける者が減少し、保険料が上昇するハード・マーケットであったことから、単に契約更改時期の問題だけではなく、むしろそれ以上に、我が国の裁判所においては、旅客の人身損害に対する航空会社の賠償限度額が制度上存在していても、非常に認められにくい現状であることを丁寧に説明し、これがアンダーライターに十分理解されたことが大きく貢献したものと判断される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我が国の航空会社の航空保険を引受けている日本航空保険プールの代表幹事会社においても、コロナによる社会的要請に従い出社人数制限を行わざるを得なかったため、過去の事案の調査にかなりの手間と時間を要し、また事情聴取を行う際のスケジュール調整にも支障をきたす局面もあったが、代表幹事会社の積極的な協力と支援により、本研究の第一段階として研究初年度に予定していた過去の航空保険料の変化に関する調査を、いくつかの積み残し部分はあるものの、おおむね実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第二段階として、1999年モントリオール条約の発効とともに、国内法を改正して国内線に対しても航空会社に一部無過失責任を課す英国と韓国において、航空保険料率の増加が現実に生じたか否かの実地調査を行う予定。なお、事情聴取の対象としては、世界の航空保険料率の情報の集まる英国ロイズ保険組合の保険ブローカー及び英国航空・大韓航空を予定している。
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Causes of Carryover |
航空保険料率の増加要因分析において、コロナ拡大防止のため日本航空保険プール代表幹事会社が社会的要請に基づく出社制限を行わなければならなかったため、当初研究初年度に予定していた代表幹事会社への事情聴取の一部を、コロナ規制緩和を待って次年度に繰り越さざるを得なかったため。また、これに伴い、調査に協力し、支援をいただいた代表幹事会社への謝金も次年度へと繰り越さざるを得なかったため。 なお、次年度においては本研究の第二段階として、国内線においても航空会社に一部無過失責任を課す国内法を制定した英国と韓国における航空保険料率の増加について、予定通り実地調査を実行する方向で関係各社と調整中。
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