2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01237
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤林 大地 西南学院大学, 法学部, 教授 (80631902)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リスク情報 / 虚偽記載 / 不実開示 / 情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一に、有価証券への投資において引受けが問題となるリスクとして、発行会社が虚偽記載等の可能性を公表した後に有価証券を取得した者は、虚偽記載等が実際に存在した場合に発行会社に対して損害賠償を請求することができるか、すなわち、発行会社が虚偽記載等の可能性を公表した場合に投資者は当該リスクを引き受けたと評価されるべきかという問題について検討を行った。そのために、当該問題を扱った複数の裁判例を素材として、判例における相当因果関係に係る理解に照らした検討を行った。そして、リスクの引受けを肯定するためには、当該リスクを引き受けるか否かを判断するための十分な情報が開示されていることが必要であり、虚偽記載等が存在する可能性だけでなく、そのおおよその規模等の情報が開示されていることが必要であるという結論を導いた。 第二に、発行会社において企業不祥事等が生じた場合に、それに関する情報をリスク情報として開示することが金融商品取引法上義務付けられることになるかという問題について検討を行った。そのために、企業内容等開示府令の沿革について検討を行うとともに、情報開示制度の機能的分析を援用した検討を行った。そして、リスク情報を開示しないことによる利益が情報開示の社会的効用を上回る場合については、発行会社に対してリスク情報の開示について裁量を与えるべきであるという結論を導いた。 第三に、リスク情報の開示制度について、米国の制定法および判例法の検討を行った。そして、判例では、リスク情報の開示について発行会社に一定の裁量を肯定する解釈が採用されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金融商品取引法上のリスク情報の開示制度に関して、発行会社にリスク情報の開示について一定の裁量を認めるべきであるという結論を提示することができた点で、研究は進展していると言える。発行会社にどのような場合に裁量が認めれるべきかという問題については、さらなる検討が必要な点がある。
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Strategy for Future Research Activity |
リスク情報には様々な情報があり、とりわけ近時は気候変動リスクに関する情報に注目が集まっており、米国では開示の義務化の動きも見られれる。また、米国においてはリスク情報の開示について議論や裁判例の蓄積があるところ、それらの調査・検討はまだ十分にできていない。これらは本研究の目的を達成するための重要な手掛かりとなると考えられるため、2022年度は米国法の調査・検討に取り組むことを予定している。
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Causes of Carryover |
書籍の購入のために確保していた予算について次年度使用額が生じた。2022年度に書籍の購入のために使用することを計画している。
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