2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01237
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤林 大地 西南学院大学, 法学部, 教授 (80631902)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 不実開示 / 虚偽記載 / 民事責任 / 有価証券 / 有価証券報告書 / 発行者 / 情報開示 / 金融商品取引法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、リスク情報の開示に関連する問題として、発行者の故意・過失の意義および役員の相当な注意の意義について検討を行った。 第一に、平成26年改正により金融商品取引法21条の2の責任が無過失責任から過失責任に変更されたところ、有価証券報告書等の虚偽記載に係る発行者の故意・過失の意義が問題となる。この問題は、法人の不法行為責任に係る問題であり、民法709条に関する議論や裁判例について調査・検討を行った。特に、民法学においては組織過失の議論が注目を集めているところ、組織過失という発想が妥当すべき領域について検討を行った。 第二に、有価証券報告書の虚偽記載について金融商品取引法24条の4は、取締役などの役員について立証責任を転換した過失責任を規定しており、役員は「記載が虚偽であり又は欠けていることを知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかつたこと」を証明した場合には免責されるものとしている。そのため、「相当な注意」の意義が問題となる。この問題については先行研究があるものの、いまだ十分には明らかになっていないため、「相当な注意」についてどのように理解すべきかという基本的視点について検討を行った上で、その具体的な意義について検討を行った。 また、本年度は、判例研究として、福岡地判令和4年3月10日金融・商事判例1642号23頁および日産自動車事件・東京地判令4年3月3日資料版/商事法務458号123頁について研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リスク情報の開示制度について検討を行うためには、関連する問題である発行者や役員の責任の検討も必要となるところ、本年度はその検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
金融商品取引法21条の2の発行者の故意・過失の意義を論文として纏めることが本研究を進めるために重要となるため、今後はこの点に注力する。この問題に関する外国法について調査を行うことも予定している。
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Causes of Carryover |
予定していた出張を中止したため、次年度使用額が生じた。
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