2021 Fiscal Year Research-status Report
IT技術の進展と権利の帰属・移転の仕組みに関する法制度の展開
Project/Area Number |
21K01242
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
コーエンズ 久美子 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00375312)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 証券 / デジタル / 分散型台帳 / 登記 / 登録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分散型台帳技術など新しい技術を活用した権利の帰属、移転の仕組み、このような権利を対象とした担保制度のあり方について、またこうした技術の適用の検討が進められている登記、登録、名簿など情報の登録システムについて、従来の有価証券法理、社債、株式等の振替に関する法律等を踏まえた上で、比較法的な視点からユニドロワ(私法統一国際協会)および国連商取引委員会の条約、原則等、米国統一商法典第8編等の分析、現在の動向を通して、望ましい規整(私法上、監督法上)のあり方、その理論的基礎について検討することを目的としている。 ユニドロワはデジタル資産についての私法上の取扱いに関する「原則」の策定に向け、ワーキンググループを立ち上げ、これまでの成果をホームページ上で公開している。「原則」においては、(物の占有に近い概念として)コントロール可能なデジタル資産について、準拠法、譲渡、担保取引などに関する重要な概念、規定のあり方を示し、これを各国が国内法に取り入れることを通して、法的な安定を実現するよう提唱されている。一方、米国のUniform Law Commissionにおいても、新しい技術を活用した電子的記録についての規定およびそれに付随する統一商法典の改訂作業が進められている。2021年は、こうした動向について資料収集を行ったが、分析作業が遅延している状況である。 他方、ユニドロワや国連商取引委員会が策定した担保取引についての条約においては、電子化された登記(登録)制度が前提とされており、「グローバルスタンダード」と称される制度のあり方が提示されている。わが国おいては、担保制度の見直しが進められているとろこであり、「グローバルスタンダード」の観点から、わが国の動産・債権譲渡登記制度の特徴、課題等について検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、実質的には当初2020年が最終年度であった「分散型台帳技術を利用した権利移転システムの法規制についての研究(課題番号18K01329)」の研究成果を踏まえつつ、研究対象を権利の帰属、移転のシステムに加え、分散型台帳などの新しい技術を活用した株主名簿、債権、動産の担保取引における登記(登録)といった情報の登録システムに拡大し、規整のあり方について検討するものである。しかし2020年、コロナウイルスの感染拡大により、当該研究において当初予定していた対面による聞き取り調査や打ち合わせ、情報収集を実施することが不可能となった。またすでに収集していた資料分析なども、感染拡大への対応等により遅延したことから、当該研究について1年間の研究期間延長を申請し、検討を継続した(2021年終了)。 このような状況から、本研究において当初予定していた紙ベースの有価証券から証券口座振替制度に至るまでの理論的な展開の整理、実務的な課題の再検討、具体的には共同名義口座や株式の共同相続等の取扱いについての検討から、改めて口座記録の意義を検討するといった作業が残されたままとなっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
国際的な動向については、ユニドロワのプロジェクト(デジタル資産)も、米国Uniform Law Commissionの統一商法典に関する作業(コントロール可能な電子的記録)も、着々と進んでいる様子であり、スピード感を持って資料収集、分析を行う必要がある。もっともコロナウイルス感染状況および各国の対策については見通しが立てにくいことから、原則、可能な限りオンラインによる研究の遂行が適当と思われる。なお、2017年より継続的に開催されているオックスフォード大学におけるワークショップには、引き続き出席し、情報収集をしていく予定である(今年も対面、オンラインのハイブリッド開催のようである)。 さらに一定の分析結果を国内の金融法関連のワークショップ等において積極的に公表するとともに、意見交換、情報収集に努めることとする。
|
Causes of Carryover |
2021年最終年度の研究課題(課題番号18K01329)について研究期間を1年延長したことから、本研究にとっても必要と思われる書籍、雑誌等はその研究費を当てて購入した。またオンラインによる研究環境整備のためにPCを購入予定であったが、現在使用中のものの状態に照らし、次年度以降に見送ることとした。 また2022年は、米国における聞き取り調査等を対面で行うことを計画しているが、コロナウイルス感染状況およびUniform Law Commissionの作業の進捗状況を考慮し、調査の時期を決定することとしたい。
|