2021 Fiscal Year Research-status Report
間接強制の弾力的活用と内在的限界ー独・日・韓の発展的比較法研究ー
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21K01243
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
金 炳学 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40350417)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 間接強制 / 作為・不作為執行 / ドイツ民事訴訟法 / 韓国民事節次法 / 日本民事手続法 / 電子訴訟 / 次世代裁判 / 諫早湾訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究実績の概要としては、まず、ドイツ-日本-韓国における作為・不作為請求の強制的実現手段としての間接強制について重畳的に研究を推し進めた。とくに、諫早湾の開門・非開門訴訟の帰趨について民事手続法的観点からの考察を論文にまとめ上げ、国際的な法の環流のため、韓国民事執行法研究において公表を行った。その結果、ドイツおよび日本法の到達点を韓国に導入することが可能となり、今後、韓国からの還元が大いに期待できる状況を作り出すことができた。あわせて、諫早湾の開門・非開門に関する請求異義訴訟の趨勢を見極めつつタイムリーな考察を公表する準備を設けることができた。 つぎに、次世代裁判(電子訴訟、映像裁判、仮想裁判、AI裁判)のドイツ-日本-韓国の有機的連携に基づく構築の観点から、先進的な民事電子訴訟システムを構築した韓国の電子訴訟の10年間を振り返るシンポジウムの第一次資料をWeb紀要に公表することで、制度導入の準備段階が進んでいる日本の電子訴訟の整備における重点的考慮事項について学術的・実務的な指針をひろく還元した。とりわけ、韓国の次世代電子訴訟推進団とのネットワークを構築することが可能となり、今後、最新の状況・課題設定について、適時、日本に紹介する土台を構築することができた。 さらに、日韓にまたがる民事手続法上の共通問題について、ドイツ法を基軸とした論文の紹介を精力的に公表し、上記三カ国が直面する喫緊の課題についての基礎理論的考察の還元を企図した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究進捗状況は、当初の計画以上に進展している。その理由としては、まず、前段階の研究で得られた研究成果の蓄積に基づき、継続的に科研費に採択されたことで研究の一貫的持続性が担保された点にある。すなわち、間接強制の研究について、過去2回の研究助成を受けることができたため、その理論的蓄積を応用・展開することが可能となったことが大きな推進源となっている。 つぎに、当該年度は、いまだ、新型コロナ感染症の影響を受けているため、海外に赴き、対面でのシンポジウム報告、現地調査等について、多大な支障を受けていることは確かであるが、いままで培ってきたドイツおよび韓国の研究者とのネットワークをフル活用し、Zoomミーティングなどの非対面の遠隔交流技術を用いて、綿密な準備をすることで、国際的研究協力を中断することなく実施できたことにある。 さらに、各国の研究成果物が紙媒体のみならず電子的にアクセスすることが格段に可能となってきたため、リアルタイムでの研究推進が実現し得た点を挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、まず、引き続き、ドイツ-日本-韓国の間接強制制度を中心とした作為・不作為執行について、重畳的に研究を推し進める。その際、フランスのアストラント等についても考察に加えることで、より一層、深度を増した研究を進めることを企図している。とりわけ、日本法において喫緊の課題となっている諫早湾の開門・非開門訴訟の趨勢に応じた理論的アプローチを実施する。 つぎに、次世代裁判の上記三カ国の連携的・有機的構築のため、継続的に、Zoomミーティングなどによる研究会を開催していく。この点、既に、メンバー構成は確定しており、綿密な事前準備も済ませており、より一層、充実した日韓の国際的研究を継続的に実施する。 さらに、上記三カ国が直面している民事手続法上の喫緊の課題解消のための学術的・実務的アプローチを行っている論説などを、当該三カ国においてひろく紹介する手はずを整えている。この点、当該論文などを紹介する翻訳などは、既に、入稿済みである。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響のため物流が遅延し、ドイツの法律専門図書を取り寄せるのに、想定外の時間がかかってしまう事態が頻発した。次年度使用額については、遅延したドイツ法の図書の購入に充てる。
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