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2022 Fiscal Year Research-status Report

経営判断の失敗による取締役の責任の適正化に向けた理論的検討

Research Project

Project/Area Number 21K01244
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

堀田 佳文  千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40375605)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords経営判断原則 / 内部統制システム構築義務 / 信頼の原則
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、経営判断原則と内部統制システム構築との関係について検討を進めた。
第一に、経営判断原則は裁判例の積み重ねによって現在も形成が継続しているところ、これまで主として経営判断原則は、株式会社の対外的取引のような対外的な業務執行局面において問題となってきたが、最近の判例・裁判例においては、従業員の労務管理のような対内的な業務執行の局面でも問題となりうることに着目した検討を行った。対内的な業務執行に着目すると、必然的に、内部統制システム構築義務の局面が問題となる。内部統制システム構築義務に関連して経営判断原則が問題となった事例として、当初は債券取引やデリバティブ取引で損失を出した事例がみられたが、直近では、労務管理に係る内部統制が問題となる裁判例がいくつか出ている。後者のようなケースには、直感的にはカテゴリカルに経営判断原則が適用されないようにも思えるが、内部統制システムの構築がいわば「見えない敵との戦い」であることからすると、「見えない敵」に完全に対応するには無限のコストが必要となるのであり、会社としては、コスト・ベネフィットに見合った内部統制体制を構築すれば足りると考えられることから、この部分に経営判断原則が適用される余地が見出せることを議論した。
第二に、内部統制体制が整っている会社における、経営判断原則と、いわゆる信頼の原則の関係についても、裁判例に即して検討を行った。こちらは実務的に影響力の大きい事件として、有力媒体に刊行することができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

まず、研究業績の公表がやや遅れいている。すなわち、上記「研究実績の概要」に第二として記載した研究については、令和5年4月10日に刊行されたが、令和4年度内には間に合わなかった。また、上記第一として記載した研究については、原稿自体は令和4年9月に提出しているのだが、掲載媒体が共著書であることの影響で、出版事情から年度内の刊行に漕ぎ着けることができなかった。こちらは現時点において、令和5年9月の刊行が予定されており、これに向けた作業を粛々と進めているところである。出版事情による成果公表の期ズレは遺憾ながら起こりうることであるが、研究自体が進んでいないということではないので、成果公表については「やや遅れている」と評価することにした。
次に、本研究計画全体との関係では、令和4年度も海外調査を実施することができなかった。研究計画では、1年目(令和3年度)と3年目(令和5年度)にドイツにおける海外調査を計画しているところ、1年目はコロナ禍で渡航が実現せず、これを2年目に繰り延べることとした。そこで2年目にこれを実施しようとしたのだが、年度中盤にかけては引き続きコロナ禍の影響が強く、また年度末にかけては他の業務との関係で渡航の時間を捻出することができなかった。こちらについても、研究計画上は3年目にも渡航を予定しており、そちらに統合する形で実現したいと考えている。このため、この点についても「やや遅れている」と評価することにした。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題の今後の推進方策については、研究計画通り、引き続き、(1)経営判断原則についての国際比較研究を展開することと、(2)(1)を通じた経営判断原則の理論的な根拠付けの明確化に努めることとしたい。
まず、第一点については、コロナ禍も徐々に沈静化している現在の状況下で、海外渡航も少しずつ従来通りに実施できるような環境が整ってきていることから、これを実施し、もって、経営判断原則の日独を中心とした比較検討を進めていきたい。研究上のパートナーであるベルリン・フンボルト大学のGregor Bachmann教授とは渡航ができない状況下でも緊密に連絡が取れており、適切なアドバイスを頂いている。3年目以降はこの連携を一層強化し、研究期間中にその成果を公表することができるよう尽力したい。
第二点については、第一点、およびこれまでの研究を踏まえてさらに進めることになるが、文献や先行研究はこの2年間で概ね揃ってきており、その分析も進んでいるので、徐々に研究成果のアウトプットの段階に進めていきたい。ただ、近時の裁判例として、東京電力福島第一原発代表訴訟事件判決(東京地判令和4年7月13日 LEX/DB25593168)は、経営判断原則について従来とは異なる判断を示している点があり、その分析や上訴の動向もにらみながら検討を進めていきたい。本件判決はかなり特異な事案ではあるが、その論理の一般性に着目して、本研究課題に取り込んでいきたい。

Causes of Carryover

令和4年度も予定していた海外渡航ができなかったため、次年度使用額が生じた。令和5年度に海外渡航予定があり、これに充当する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2023

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 大規模会社取締役の不動産購入判断と経営判断原則2023

    • Author(s)
      堀田佳文
    • Journal Title

      令和4年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊)

      Volume: 1583 Pages: 85-86

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2023-12-25  

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