2021 Fiscal Year Research-status Report
戸籍法と嫡出推定制度ーー身分登録の実体法上の基礎としての実親子法の観点からーー
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21K01251
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小池 泰 九州大学, 法学研究院, 教授 (00309486)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 戸籍制度 / 実親子法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、戸籍への登録の基本的な仕組みを中心に戸籍制度を分析した。同時に、日本およびドイツにおいて進められつつある実親子の実体法の改正作業の検討も行った。 後者のうち、日本の実親子法改正は、戸籍制度の実体的基礎の変更をもたらす点で重要である。とりわけ今回の改正は無戸籍児の発生原因への対応という側面もあり、本研究とも密接に関わってくる。もっとも、嫡出否認権者の拡大はあるものの、民法772条の嫡出推定制度については再婚禁止期間廃止への対応にとどまり、抜本的な解決は先送りされている。この点で、本研究の課題として挙げた「裁判外の事実証明によって772条の適用を回避した形での出生の届出の可能性」の検討は、改正が実現した場合であっても必要といえることが確認できた。他方、ドイツでは、同性婚の承認に伴う実親子法の改正作業が進められている。これはSPD主体のリベラル政権の誕生により加速化することが予想される。この改正では、とりわけ女性同士の婚姻後に精子提供で子が誕生した場合への対応を念頭に、実親子関係の規律の再構築が企図されている。この点で日本法とは改正の前提状況が相当に異なる。しかし、日本においても同性婚の導入は遠くない将来の立法課題であり、その場合の公的登録制度の構築(戸籍制度で対応するか、成年後見登記のような別制度で対応するか)及びその内容(身分関係をどの範囲で・どの制度に登録し、制度間で登録事項を関連づけられるようにするか)は、身分の公的登録制度の検討にとって重要な問題となる。さらに、同性婚承認後の実親子関係の規律とその登録も、いずれは対応の必要な課題となる。ドイツの状況については、ドイツ政府の草案等の立法関係文書及びその日本法への紹介論文を収集し、分析を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の親子法制部会の改正要綱案は、出生の届出の際に裁判外での事実証明を利用する可能性に触れるものではない。しかし、再婚禁止規定の下での出生届出の取扱いは検討されており、これは前期可能性についても関わるものといえる。すなわち、再婚の婚姻の届出の受理にあたって、嫡出推定の規定が適用されるか否かが事実上審理されるのである。これは、本研究が着眼する戸籍実務における「推定の及ばない子」対応と同様に、裁判外で772条の適用除外を認める可能性を検討するための新たな素材を提供するものといえる。 また、同性婚の承認に伴うドイツ法の検討からは、公的身分登録簿に何を記載すべきか、その記載のプロセスはどうあるべきか、という戸籍制度の抜本的検討のための有用な視点が得られた。 以上の新たな素材と分析視点は次年度以降の検討に活用できるものであり、進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、従来の戸籍実務において認められてきた、裁判外での事実証明による772条の適用除外について、通達・回答を中心に分析を進めていく。その際、今年度の研究で得られた再婚の届出の際の772条の適用如何に係る実務の取扱い・考え方と対比させつつ、検討していく。合わせて、出生の届出において親子関係をも公簿に記載する必要があるか否か、という点も、ドイツ法の身分登録制度と対比させつつ検討を行う。 以上を通じて、研究期間の中間年では出生届出制度の在り方を検討していく。
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Causes of Carryover |
年度末に納品された書籍につき、割引価格の詳細が中断段階では判明せず、その結果として数百円単位の誤差が生じたことによる。
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Research Products
(1 results)