2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01252
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 幸代 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (00368408)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 企業統治 / 従業員 / ドイツ / コーポレート・ガバナンス / 経営関与 |
Outline of Annual Research Achievements |
従業員による経営参加をめぐる有用性の検証を行い、その実効性を担保する法的枠組みの解明を図ることが本研究の目的であるが、そもそも日本における企業統治(コーポレートガバナンス)上の従業員関与のあり方については、日本版「コーポレートガバナンス・コード」においても従業員をはじめとするステークホルダーとの適切な協働が求められる(「基本原則2」2018年6月改定版)など、徐々にその重要性に目が向けられ始めてはいる。しかしながら、2019年度の人事白書の調査結果によれば、いわゆる「従業員エンゲージメント」(従業員の移行を会社の経営に反映させるための各種措置)の重要性は9割の企業が認識しているにもかかわらず、実際に従業員のエンゲージメントが高いのは約3割に過ぎないとされる。 調査初年度は、このような日本における従業員の関与についての実状を把握するとともに、次年度に予定される外国調査の基盤構築を行った。実状把握のための情報収集においては、法学分野外から行われたアプローチにも目を向け、数値データに基づく従業員主権性の解析資料も参考にした(たとえば、社内の主要上位職に外部からの中途採用者ではなく生え抜きの社員で独占する程度を数値化し、当該数値が高いほどその企業は従業員による会社支配が強く、従業員主権型コーポレートガバナンスが行われているとする解析方法など)。外国調査のための基盤構築としては、2022年度前半期より研究滞在するドイツの従業員関与の状況を日本国内で収集可能な資料を用いて予め確認するとともに、在外研究の実現に向けて所属機関および受入機関との調整作業(先方大学においては教授会での受入承認に向けての申請手続等)を行い、在外研究の開始に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍ならびに(研究者の)所属機関の事情により在外研究の開始期が半年間延期となったことで(終了時期は当初の予定どおりであることから)期間も半年に短縮せざるを得ない見込みであり、その分海外調査の進行に遅れが生じている。なお、渡航準備段階においてもドイツおよび日本(特に日本)におけるコロナ関連規制が妨げとなり多くの制約・遅延が生じていたが、事前準備のため早めに現地に渡航して調整を行うことで、2022年度からは研究計画通り在外研究の開始に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施した日本の現状把握をふまえて、2年目以降は比較法的見地から海外の状況を検証する。具体的には、従業員による経営参加システムを長年擁してきたドイツの実状、ならびに近年従業員の経営参加システムの導入を試みた英国における規制改革の影響を調査する。本研究計画に照らし2年目(前半期)はドイツを拠点に研究活動を行う。ドイツを拠点とすることでドイツ本国の調査だけでなく英国に対する渡航調査および情報収集も容易になり、本研究計画のスムーズな実施・遂行が期待できる。後半期はドイツ滞在の延長が可能となった場合は引き続きドイツを拠点に、不可能な場合は日本に拠点を移し研究活動の継続を行う予定である。 なお、ドイツの経営参加システムについて本研究計画で注視しようとしている点は、(これまでも先行研究のあった)共同決定制度の仕組みそのものではなく、むしろ同規制態様の現時点での評価と実務対応状況である。また当該状況の客観的な評価に資するため、英国で関連する規制改革が行われた後の状況を比較検証の材料とする予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により海外渡航に対する制約が大幅に強化されたことでで海外渡航期間を当初の予定どおり確保することが困難となり、当初予定より期間の短縮ならびに延期が生じた。同じく感染状況の拡大により国内の移動にも自粛が強く要請されたため、国内における遠隔地での調査活動も控える必要があり、こちらも次年度以降に予定を繰り越し、状況が改善次第再開する見込みであり、それに伴い予算も次年度以降に繰り越して使用する必要性が生じている。
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